人口減少時代の農山村の土地利用を考える農林水産省の有識者検討会の第3回会合が24日、省内で開かれ、農山村で増える耕作放棄地に植林する森林化をめぐって議論した。
人口減少・高齢化で農業の担い手が減る中、中山間地域を中心に増えている荒廃農地(耕作放棄地)対策として、検討会はさまざまな可能性を模索。この日は熊本県林業研究・研修センターの横尾謙一郎氏が、成長が早いことで注目されているケヤキや桐に似た落葉樹、センダンの造林の現状を話した。
委員のうち、金沢大の林直樹准教授は秋田県で平成27年、人が住まなくなった62集落の土地利用を調査した結果を元に「農地への植林は特段珍しいものではなく、無住集落でも林業は健在だった」と指摘。「林業と農業を一体的に考え、守る農地は守った上で、山間地の耕作放棄地には植林などの選択肢も必要ではないか」と述べた。
京都大の深町加津枝准教授は「植林しても、手入れする人がいないと放置される懸念もある。『農地の放棄イコール荒廃化』ではなく、自然に返った農地でも湿地や野草地、里山林などとして、生物多様性や水源、防災など価値あるものに変わっていく可能性があることも考慮に入れてほしい」と話した。
農水省によると、農地維持のための交付金「中山間地域等直接支払制度」でも、次善の策として荒廃農地や耕作放棄の懸念がある農地の森林化が行われ、30年度に全国で46件、計0・062平方キロあるという。