世界のかたち、日本のかたち

対中政策見直す時期 大阪大教授・坂元一哉

カリフォルニア州のニクソン大統領図書館で歴代米政権の対中政策に対して批判するポンペオ米国務長官=7月23日(ロイター)
カリフォルニア州のニクソン大統領図書館で歴代米政権の対中政策に対して批判するポンペオ米国務長官=7月23日(ロイター)

米国政府はパンデミックを契機に、対中政策の歴史的大転換に乗り出した。ホワイトハウスが作成した報告書「合衆国の中華人民共和国に対する戦略的アプローチ」(5月20日)はそのことを次のように説明する。

米国は中国との国交回復(1979年)以来、中国に対する関与の深化が「中国社会をより開放的にし、中国を建設的で責任あるグローバルな利害関係者」に変えるとの希望を持ち続けてきた。だがその希望は、政治、経済の改革を制限しようとする中国共産党の意志を過小評価するものだった。中国共産党は国内改革を停滞させ、逆行させる一方で、「自由で開かれたルールに基づく国際秩序を利用しつつ、それを自分たちに都合のいい秩序に変える」ことを企てている。

米国はその企てに対抗するため、中国へのアプローチを「競争的アプローチ」に転換する。それは(1)「米国の諸制度、同盟、パートナーの抵抗力を高めて中国の挑戦に打ち勝つ」(2)中国に「米国と同盟国、パートナー諸国の死活的利益に有害な行動をやめる、または減らすよう強制する」アプローチである。

報告書が公表された後、4人の米政府高官が関連する演説を行っている。それぞれ中国共産党のイデオロギー、米国内での中国の諜報活動、不公正な経済政策などを厳しく批判するとともに、中国に対する新しいアプローチの必要性を論じるものだった。ポンペオ国務長官にいたっては、世界は米国か中国かではなく自由か暴政かの選択に直面しているとまで論じた。

米国政府は言葉だけでなく、テキサス州ヒューストンの中国総領事館をスパイの巣窟だとして閉鎖を命じ、安全保障上の理由から、ファーウェイなど中国ハイテク企業数社の製品を使用する企業と米連邦政府との取引を禁止するといった、「競争的アプローチ」に沿う大胆な措置を次々と繰り出している。

米国が約40年間続けてきた対中関与政策をやめるという以上、日本がこれまで通りの対中政策を続けることは難しい。パンデミック発生で明らかになった、中国との経済的相互依存が持つ安全上のリスク、発生後の中国のあまりにも非常識な言動にも鑑(かんが)み、日本もこの際、中国に対する従来のアプローチを、政治、経済、安全保障すべての面で見直すべきだろう。

とくに早急に見直すべきは、ポンペオ長官が「いじめ」と呼んだ尖閣諸島周辺における中国の挑発行動への対応である。日本政府は、中国の「いじめ」に対し抗議を繰り返してきた。だが抗議だけなら中国政府は、安心して挑発を続ける、あるいはエスカレートさせるだろう。

世界最強の米国と同盟し、世界3位の経済大国であり、相応の防衛力を有する日本を、中国が「いじめ」続ける。そういう構図は中国に自信を与え、東シナ海、南シナ海における冒険主義拡大の誘因になるだけである。ここは米国の「競争的アプローチ」に連動し、「いじめ」をやめさせる思い切った手を打つべき時だと思う。(さかもと かずや)