芥川賞に決まって

円滑なインタビューのために 遠野遥

 第163回芥川賞に決まった遠野遥さん
 第163回芥川賞に決まった遠野遥さん

 賞をとり、インタビューを受ける機会が増えた。どのインタビュアーも丁寧で、嫌な思いをすることはほとんどない。しかし、中にはうまく答えられなかった質問もある。別に怒ってはいないし、というか私のせいだし、聞かないでくださいというほどではない。が、かわりの質問があるなら、そちらにしてもらったほうがインタビューが円滑に進むと思われるため、ここに書くこととする。

 《1 この作品で伝えたかったのはどういうことなんでしょうか》

 伝えたいことがないため、うまく答えることができない。あったのかもしれないが、それは端的に説明できるものではないし、不特定多数の人間にわかるように説明するのはなおさら難しいと思われる。そもそも私は、何かを伝えるために小説を書いているのではない。何かを伝えたいなら、小説を書いて伝えようなんて迂遠(うえん)なことはせずに、友達に話したり、SNSに書いたほうがいいと思う。が、伝えたいことがあって、それが作品を支える強い力になっている作家も時々見かける。作家にも色々なタイプがいるのだと思う。

 《2 作品世界の楽しみ方を教えてください》

 私の作品をどう楽しめばいいのか、私にもよくわかっていない。私は書きたいように書くし、読むほうも読みたいように読んでくれたらいいと思う。合わなかったら、他の作家を読めばいい。実にたくさんの小説があるし、今この時も誰かが小説を書いていて、これからも増え続けていく。

 《3 作品を覆っている無機質さを、どのように作っていったんでしょうか》

 無機質さを作ろうと思ったことはない。出来上がった自分の小説を読んで、無機質だな、という感想を抱いたこともない。こう書くのが自然だな、と思った通りに書いている。無機質だという前提で質問されると、少し戸惑ってしまう。反対に、いつか絶対無機質とは言われないようなものを書こうという気持ちにもなってくる。

 《4 小説を書き始めたきっかけを教えてください》

 これは、かなり頻繁に聞かれる。インタビューに限らず、知り合いからもよく聞かれる。きっかけとは、どういったものを想定しているのだろうか。小説を読むことで救われてきたから、いつしか自分が小説を作る側に回りたくなったとか、そういうストーリーがあればきれいにまとまるだろうか。私の場合は、きっかけらしいきっかけは何もなく、うまく答えることができない。元手がかからないし、読み書きはもともとできたし、時間もあったからなんとなく始めた、と答えるようにしているが、これでは全く話が盛り上がらない。他のことを聞いてもらったほうが、お互いにとっていいと思う。でも、決して適当にやっているということではなく、いつも一生懸命書いている。  

(寄稿)

 とおの・はるか 平成3年、神奈川県生まれ。慶応大法学部卒。令和元年に「改良」で文芸賞を受けて作家デビュー。今年7月、「破局」が第163回芥川賞に選ばれた。

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