内田は骨の髄まで鹿島の選手だった。現役最後の試合となった23日のG大阪戦後の引退セレモニーで、こう切り出した。「先輩が選手生命を削って努力するのをみてきた。その姿を後輩にみせられない僕が鹿島でプレーするのは違う。サッカー選手を引退します」。勝利に貢献できなければ大好きなサッカーもあきらめる。常勝軍団の一員らしい、32歳の決断だった。
ラストゲームでも右足でドラマを生んだ。0-1の後半ロスタイム、右サイドから前線へ送ったボールは荒木を経由し、最後は犬飼が頭でネットを揺らした。チームを連敗の危機から救う土壇場のプレーでチームに勝ち点1をもたらした。
伝統を後輩へ引き継ぐ74分間だった。前半16分に途中出場すると、前半39分にはカウンターを防ぐ反則で警告を受けた。後半にサポーターを巻いた右足に激しい反則を浴びると、痛がることもなく同点を目指してプレーを再開した。仲間と勝利の喜びを分かち合うために全力を尽くした。
心残りは例年にない苦境の中でチームを去ること。「このような状況の中で申し訳ない」と言葉を詰まらせた。ただ、すべてが鹿島のためだということは誰もが理解している。チケットが完売し、ピッチを去る背番号2に送られたファンからの拍手が、それを物語っていた。(奥山次郎)