天安門も雨傘も削除…香港教科書、出版社が自己検閲 教師ら反発

天安門も雨傘も削除…香港教科書、出版社が自己検閲 教師ら反発
天安門も雨傘も削除…香港教科書、出版社が自己検閲 教師ら反発
その他の写真を見る (1/3枚)

 【香港=藤本欣也】香港で高校の教科書をめぐり、出版社側の自己検閲が問題となっている。香港への強権統治を進める中国に配慮し、1989年の天安門事件や2014年の雨傘運動など民主化デモに関する記述の削除・削減が加速したためだ。教師ら学校関係者は21日、「洗脳教育を断固拒否する」との声明を発表、反発を強めている。

「推薦教科書」指定のため

 問題化しているのは、高校の必修科目「通識」の教科書。通識は、社会問題などさまざまな課題を生徒に与え、生徒の考える力を育成する「探求型学習」だ。「愛国心ではなく、批判的思考を育んでいる」として中国政府が昨年来、非難してきた経緯がある。

 通識の教科書は本来、香港政府の審査を受ける必要はない。ただ、政府は今回、政府の専門家や学者から参考意見を聞ける「専門家相談サービス」を始めた。

 ある高校教師は産経新聞の取材に、「サービスを受けるかどうかは出版社の自由だが、政府から『推薦教科書』に指定してもらうためには受けるしかない」と明かす。各出版社は、9月からの新学期で使用する教科書の原本を同サービスに送り、専門家の意見を取り入れて「自発的修正」(同教師)を迫られた形だ。

イラスト差し替え、写真も消え…

 改訂前後の各教科書を比較した香港メディアによると、「中国からの批判を避けるために行われた」(蘋果=ひんか=日報)としか考えられないような改訂が多い。

 ある教科書では、中国民主化運動を武力弾圧した天安門事件をめぐり、(1)戦車の前に立ちはだかる男性を描いたイラスト(2)「武力鎮圧」や「中国人民解放軍が天安門広場に進駐」の文言-が削除された。

 香港民主化運動の雨傘運動や、中国の禁書を扱う香港の「銅鑼湾書店」関係者らが15年に失踪した事件の説明と写真を、ばっさり削除した教科書もあった。

 また、ある教科書では「私は香港人だ」と記された旗を持つデモ参加者のイラストが、「中国の経済発展の成果を享受できて、私は中国人であることが誇らしい」と説明されたイラストなどに差し替えられた。

 中国政府の非営利教育機構「孔子学院」の政治性が海外で問題になっている-と説明されたイラストを削除した教科書もあった。

 中国国営新華社通信は21日、「ようやく消毒が行われた」などと評価する論評を発表。これに対し、香港の学生や教師ら学校関係者の諸団体は同日、「事実上の政治的審査だ」として改訂の撤回を求めた。

会員限定記事会員サービス詳細