近ごろ都に流行るもの

「農業×福祉『農福連携』」(上)親の安心 障害者の自立育む畑

 升岡さんも「民間企業は稼がなくてはならない。収益を出すことが障害者たちの誇りになる」と力説。自らグループ長として胡蝶蘭栽培にも乗り出した。5000万円を投資した胡蝶蘭ハウスに入ると、精神障害者が知的障害者をサポートしつつ働いている。

 リーダーの1人、強迫性障害を持つ廉谷(かどたに)貞治さん(42)は、中学時代に受けたいじめが尾を引き大学卒業後に引きこもったが、「今はのびのびと働けている。胡蝶蘭にモノづくりの魅力を感じています」。鬱による精神障害で経理の仕事を辞めた鈴木順子さん(45)も、「植物の成長に癒される。10月の初出荷に向けて、無事に鉢を送り出すことが今の目標」とほほえんだ。「実は妹なんです」と鈴木マネジャー。社員の家族を積極採用しているのだ。

 重度の知的障害がある黒木貫智さん(19)も帝人社員の息子。力強いペンチさばきで胡蝶蘭の支柱作りに黙々と励む姿を、母親(49)がのぞいていた。

 「私が手伝わなくちゃ…くらいの気持ちで来ましたが、思っていた以上に1人でできている」と、瞳をうるませる。「今も『(幼児教材のキャラクター)しまじろう』の動画が好きで精神は幼いままですが、朝のお弁当作りを手伝ってくれたり、自発的に出勤の準備をやっている。職場を作っていただいたことに、感謝しています」

 企業規模が大きくなるほど、障害を持つ子供がいる社員も多くなるだろう。農福連携の特例子会社は、新しい形の福利厚生事業といえそうだ。次回は、農福連携の高収益事業、胡蝶蘭栽培の本家を取材する。

特例子会社 障害者の雇用安定に特化、配慮した会社で昭和62年、障害者雇用促進法改正により法制化。特例子会社の障害者雇用が親会社の法定雇用率(2・2%)に反映されるメリットがあり、令和元年6月時点で517社にのぼる。

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