豪雨被災の鉄道復旧は前途多難 利用者減の不採算路線も

豪雨で被災したJR肥薩線の球泉洞駅(奥)=7月、熊本県球磨村
豪雨で被災したJR肥薩線の球泉洞駅(奥)=7月、熊本県球磨村

 7月に九州の広範囲を襲った豪雨で被災した鉄道の復旧が困難に直面している。生活の足として欠かせず、政府は復旧費用の一部を支援する方針だ。ただ、利用者が減った不採算路線も多く、事業者などの財政負担が壁になるケースも想定される。災害後、廃線に追い込まれたり、バスに転換したりした例もあり、地元はやきもきしている。

 ◆「もはや限界だ」

 熊本県の球磨川に架かる橋が2本流失したJR肥薩線。被災した八代-人吉の利用者は1日455人(平成30年度)で、国鉄が民営化された昭和62年度から約80%減った。区間収支も5億円超の赤字だが、地元は通学や、高齢者の通院に欠かせないと早期の再開を望んでいる。

 温泉地・由布院(大分)を通るJR久大線は、平成29年の九州北部の豪雨で橋が流失。翌30年に復旧したが、今回再び不通に。JR九州は、28年の熊本地震で被災した豊肥線が8日に全線再開したばかりで、関係者は「あちらが直ればこちらが不通になる。対応はもはや限界だ」とこぼす。

 ◆補助と地元負担

 鉄道施設の復旧費は事業者負担が原則。ただ、鉄道軌道整備法に基づき、国や自治体が復旧費を補助する制度がある。赤字会社が抱える生活路線の維持が狙いで、会社全体が黒字でも路線が赤字なら対象となり、事業者負担は2分の1~3分の1に圧縮される。

 平成23年の新潟・福島豪雨で被災したJR只見線はこの制度を活用し、令和3年度の全線再開を目指している。今回被災した肥薩線なども適用対象になるとみられる。

 さらに充実した特例もある。今回のように大規模災害復興法に基づく非常災害に指定された場合、地域鉄道などを対象に、国が復旧費用の実質97・5%、残りを自治体が負担。事業者の持ち出しはなく、これまで三陸鉄道(岩手)、上田電鉄(長野)、南阿蘇鉄道(熊本)が支援を受けた。

 今回も熊本県の第三セクター、くま川鉄道が対象となる可能性があり、自治体が検討に着手した。ただ、線路や駅などを自治体が保有する「上下分離方式」への変更が条件。運転再開後は、地元が維持管理費を捻出する必要がある。

 ◆廃止の引き金に

 鉄道会社の関係者は「被災路線の多くはもともと、利用者が少ない山間部を通っている。災害が起きれば廃止の引き金になる」と本音を明かす。

 東日本大震災で津波被害に遭ったJR気仙沼線(宮城)と大船渡線(岩手、宮城)の区間は震災前から乗客数が減少傾向で、JR東日本は復旧を断念。線路跡をバス高速輸送システム(BRT)の専用道にする形に転換した。平成29年の豪雨で不通となったJR日田彦山線(福岡、大分)も今年7月、BRT導入が決まった。

 国交省は「今回の豪雨ではバス転換は検討されていない」と説明するが、自治体には「鉄道復旧は財政負担が懸念される」との声もある。新型コロナウイルス感染症の影響で乗客減少に拍車が掛かる中、復旧は前途多難だ。

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