コロナに負けるな

ステイホームは悟りの機会 写真家・荒木経惟さん(80)

「近所が浄土」。心境を記した書とともに、「コロナに負けるな」と、ポーズをとる荒木経惟さん =東京都新宿区(重松明子撮影)
「近所が浄土」。心境を記した書とともに、「コロナに負けるな」と、ポーズをとる荒木経惟さん =東京都新宿区(重松明子撮影)

 ■社会のルールを守る日本人は自信を持っていい

 オーストリア政府から最高位の勲章を贈られるなど世界的に著名な写真家、アラーキーこと荒木経惟さん。緊急事態宣言が全面解除された5月25日、80歳の傘寿を迎えた。毎年この日は、誕生パーティーが個展会場で開かれていたが、今年は中止。自粛のなかで出版された写真集「荒木経惟、写真に生きる。」(青幻舎)には、新型コロナウイルス禍の中に撮り下ろした新作を掲載。老いや病気との共生、荒木さん独特の「エロス(生・性)とタナトス(死)」の死生観を込めたメッセージには、「ウィズ・コロナ(コロナとともに)」を生きる日本人への励ましとヒントがあふれている。(聞き手 重松明子)

 コロナでいろんな人間性や国柄が、バレちゃったよね。日本では、ロックダウンとか強制的な措置が取られなくても、重症者や死者数は抑えられている。それは、日本人の多くは人間ができているからだよ。昔から、人さまに迷惑をかけないように社会のルールを守る。それを当然のこととして受け継いできた。日本人は自信を持っていいよ。

 今は、まじめに自粛してる若い人がかわいそうだよね。人間の一番大切なこと。愛とか恋、触れる、生身の関係性…。いちゃついちゃダメなんだろ? オレ最初「濃厚接触」と聞いてこのことだと思ったんだよ。それが、集まっての飲食すらダメだって。

 切り替えて、いっそ孤独を楽しんでみたら。「オンライン〇〇、なかなかいいですよ」とかいわれるけど、最先端、便利なことはつまらないことだよ。画面ごしに飲み会なんて、オレはやだね。言葉が響かない、震えないじゃない。まぁ、オレはスマホもパソコンも持ってないけどね。

 傘寿の記念に、「近所が浄土」展やろうと準備してたのに、コロナで冥途(霊魂の迷い道)になっちゃった。浄土とは自分の部屋であり隣近所なんだって気付いて、外出自粛の前から撮ってんだけど、コロナが追いかけてきたね。ステイホームは悟りの機会。今は、井の中の蛙(かわず)でいいって。見上げれば空が見えんじゃない。今、一番シャッター押してんのは近所と花と空だね。空が一番多いかな。その日その日、変容していくのが空であり、人生だから。

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