横浜市西区のパシフィコ横浜で19日に開催された高校ダンス部の日本一を決める「第13回日本高校ダンス部選手権(スーパーカップダンススタジアム)」ビッグクラス(13~40人)の全国大会。大阪府内からは9校が出場し、10年連続出場の同志社香里(寝屋川市)が2年ぶりに王座を奪還、府立久米田(岸和田市)が準優勝に輝いた。さらに、帝塚山学院(大阪市住吉区)が優秀賞(3位入賞)と大阪勢が上位を独占。そのほかに、樟蔭(東大阪市)が優秀賞(7位入賞)、府立柴島(大阪市東淀川区)がストリートダンス協会賞を獲得した。
世界を覆う「コロナ禍」に題材をとった高校が多かった今回の大会。同志社香里も、引き裂かれた日常とそこから這い上がる勇気を表現した。同じ題材でも、選曲や演出はさまざま。その中で同校は、フォーメーションを変化させていく構成やダンス自体の表現力で群を抜いた。
2月下旬から6月下旬まで、部員たちは離れ離れに練習するしかなかった。部長の梶浦麻椰(まや)さん(3年)は「自分たちも巻き込まれたコロナ禍。思い通りの練習ができず、ネガティブな感情も生まれた。でも苦しさを体験したことで、どんな状況でもくじけない心の強さが表現できた」と興奮気味に舞台を振り返った。
休校や部活自粛だけではなかった同校のコロナ禍。衣装の生地を発注していた衣料品会社の工場が感染拡大を受けて操業停止に陥った。衣装は一から製作し直し。副部長の城戸美夢(みゆう)さん(3年)は「最初の発注はエメラルドグリーン。保護者にも協力してもらって、ようやく間に合った衣装は黒が基調で、むしろ悲しみや苦痛を伝えるのに役だった」と語った。
梶浦さんは「自分たちで考え悩んで仕上げた。支えてもらった多くの人たちに向けて、感謝の気持ちを込めて踊った結果が優勝につながって本当にうれしい」と話し、「結果はもちろん大事だが、ダンスを含めていろんなことに絶対にあきらめないことを心がけてほしい」と後輩たちにエールを送った。
久米田は「再耀(さいき)」をテーマに、躍動感にあふれたダンスを披露した。ジャズ調の音楽に合わせて、舞台狭しと動き回る35人が表現したのは、新型コロナウイルスの感染拡大によって落ち込んだ気持ちからの脱却。「突然壊れた日常とつのる不安、その逆境から仲間を信じて再び輝く姿」を、演技に込めた。
円状に固まり、沈んだ気持ちを表すゆっくりした動きから、徐々にテンポを速め、激しい動きに移行していくステージ構成。衣装にも工夫を見せ、片面が青、もう片面がオレンジ色のフリルの表と裏を使い分けて、希望が満ちてくる様子を表現した。
新型コロナウイルスの感染拡大で余儀なくされた約3カ月の休校。練習が再開されたときに衣装や振り付けを変更した。「自分たちの表現したいことは何かを改めて考えた」ことで、今回のステージが完成したとダンスリーダーの岡崎真樹さん(3年)は話す。
部長の反中(たんなか)佑香さん(3年)は「準優勝で悔しさも残るけど、演技はやり切った。同じ目標を仲間と分かち合う最後のいい思い出になった」と話した。
帝塚山学院は、フランスの作家「アルベール・カミュ」の小説「ペスト」を題材に、ウイルスが蔓延(まんえん)し、死がもたらされていく恐怖のストーリーを熱演した。裏が黒、表が赤のドレスに身を包んだ30人が、重厚感のあるダンスを見せた。
全国大会出場を決めた後も、フォーメーションの配列や振り付けのつながりなどに改良を加えて挑んだ本番。キャプテンの矢部綾穂さん(3年)は「感染が広がり、隔離されて苦しむ様子などをポイントに演技を磨き上げた」と話した。
ほぼ半年間、部活動の自粛に始まり、練習時間の短縮、マスク着用、消毒の徹底など、練習が阻害されるもどかしさが続いた。副キャプテンの西野莉々子さん(3年)は「コロナ禍で練習できなかったと思わせないような完成度の高い演技を心がけた」と振り返る。
ステージを終えた矢部さんと西野さんは「全員が心をひとつに、ダイナミックにパフォーマンスをやりきった」と口をそろえた。
樟蔭のテーマは古代ギリシャ神話に登場する伝説の女性部族「アマゾネス」。女性の強さ、自立心を伝えたいという思いから部員たちが選んだ。
よろいを模した黄色のシャツと部族をイメージした模様のズボンという姿の28人が、壺に描かれたアマゾネスが優雅にゆったりと動き始めるところから、力強さに満ちたクライマックスまでを表現。終盤にはリフトなども取り入れた。
代表の田中結さん(2年)は「この舞台に立つことができなかった部員たちの気持ちも演技にぶつけられた」。同じく代表の奥野聖菜さん(2年)は「新型コロナウイルスや熱中症などの対策に気をつかい、充実した練習とはいえなかったが、本番では力が出せた」と笑顔を見せた。
ビッグクラス初出場での優秀賞。田中さんは「支えてくれた先輩や家族らの存在があったから、ここまでこれた。部活動に携わった全員で勝ち取った」と話した。
柴島は「前進」をテーマに、「1990年代のピップホップ」をイメージしたリズミカルなストリートダンスを披露した。初めの軽快なステップから、体全体を使ったトリッキーな動きに変化していく演出も効果的。終盤には、時間差をつけて体をひねっていくなめらかなウエーブで見せ場を作った。
キャプテンの横川(よこがわ)絢音(あやね)さん(3年)は「自分たちの目指す力強さ、個性が表現できた」と満足げな表情を浮かべた。