韓国の文在寅大統領が15日の演説で、いわゆる徴用工問題をめぐり日本企業に賠償を命じた韓国最高裁判決について「最高の法的権威と執行力を持つ」と語った。
韓国政府は司法の判決を尊重するとし、日本政府との「協議の門を開いている」とも述べた。判決がもたらした深刻な問題を放置すると言ったに等しい。これでは日本との関係改善などあり得ないと知るべきだ。
昨年12月の日韓首脳会談で、安倍晋三首相は文大統領に韓国側の責任で解決策を示すよう促した。だが文大統領は具体的な対応を示さない。対話に取り組むふりをするだけだ。不誠実極まりない。
いわゆる徴用工問題は、韓国側による国際法違反の言いがかりである。国民徴用令に基づき、昭和19年9月以降働いていた朝鮮半島出身者はいたが、不当な強制労働ではない。賃金の支払いを伴う合法的な勤労動員にすぎず、内地人も同じように働いていた。
日韓両国は、40年の国交正常化時の請求権協定で、一切の請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」と約束した。協定に伴い日本は無償3億ドル、有償2億ドルを韓国に支払った。無償3億ドルは個人の被害補償の解決金を含んでいた。個人補償を望むなら支払うのは韓国政府である。
文大統領は演説で「被害者らが同意できる円満な解決法」を求めるとしたが、被害者は難癖をつけられた企業を含む日本側だ。
国家間の約束を守るという国際ルールを無視した韓国司法が起こした問題は、韓国内で解決策をまとめ、日本に示さねばならない。それを主導すべきは、対外的に国を代表する韓国政府である。
慰安婦問題を一層こじらせたのも文大統領である。14日には「おばあさん(元慰安婦)らが『もういい』と言うまで受け入れ可能な解決策を探す」と強調した。
平成27年12月の日韓合意を踏みにじっている。合意は慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。だが、その後発足した文政権は合意を守らず、日本が合意に基づき拠出した10億円を財源にできた元慰安婦支援の財団を解散させた。
どちらの問題でも文大統領は人権を振りかざすが、日本に不当な荷を負わすよりも、北朝鮮による深刻な人権侵害という、現実の問題に取り組んだらどうか。