ソロモンの頭巾

長辻象平 温暖化と白熊 「頭数増加」とカナダの女性研究者

温暖化で海氷が減るとホッキョクグマは獲物が捕りにくくなり、飢えるという見解が主流だが…(米魚類野生生物局提供)
温暖化で海氷が減るとホッキョクグマは獲物が捕りにくくなり、飢えるという見解が主流だが…(米魚類野生生物局提供)

 地球温暖化による負の影響が最も強調されている動物は北極圏に暮らすホッキョクグマ(白熊)だろう。北極の氷は厚くても5メートル前後。それが海に浮かんでいるだけだ。そして、その面積は近年、縮小傾向を見せている。

 ホッキョクグマは、狩りの足場にする氷が減るとアザラシなどを捕らえにくくなり、飢えに苦しむといわれている。ドキュメンタリー映画「不都合な真実」(2006年)にも流氷の破片にすがりつく描写があった。こうした流れで、ホッキョクグマは二酸化炭素排出削減のキャンペーンアニマルになったのだ。

 だが、広まっている危機説の一方で、ホッキョクグマたちは一向に困っていないとする研究者の声もある。生息地の本場では個体数の動向をめぐって白熱の論争が戦わされている。

世紀末の絶滅説

 先月20日の科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」には、カナダのトロント大学の研究チームによるホッキョクグマの将来予測が発表された。

 二酸化炭素の排出が多く、100年間で地球の平均気温が4度前後上昇するようだと「2100年の時点でホッキョクグマは、ほぼ絶滅する」という宣告である。

 論拠は海氷の減少でホッキョクグマの絶食期間が長引くことにある。研究チームは幼獣や成獣の生存率が低下する絶食の限界日数を、脂肪消費の計算などから推定した。

 その結果、ホッキョクグマの集団のいくつかでは、既に限界に達していることが判明したという。北極の王者の存続に赤信号がともったとするアラート論文なのだ。

20の理由で反論

 その一方で、ホッキョクグマの減少に異論を唱える研究者たちもいる。減っていないどころか、個体数はむしろ増えているというのだから驚きだ。

 カナダ・ビクトリア大学の元非常勤教授で動物学者のスーザン・クロックフォードさんはその一人。

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