志らくに読ませたい らく兵の浮世日記

大林宣彦監督の遺作に教えられる

らく兵
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 先日、日本の8月にふさわしい映画を観(み)てきました。『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』という作品です。今年の4月に亡くなった大林宣彦監督の遺作となる映画です。ここ何年かの大林監督の作品は上映時間の長めのものが多かったのですが、今回も3時間くらいの超大作でした。

 広島の尾道にある映画館が舞台のお話です。この館が閉鎖することになり、いろんな人が集まって来る。その中で若者が映画を通して戦争を体験するという物語でした。映画全体が色あざやかで、たくさんの言葉で埋め尽くされている。その世界に思わず引き込まれてしまいました。

 晩年の他の作品もそうですが、大林監督の描きたい気持ちの大きさが、映画の枠を越えてしまっているんじゃないかという気がしました。映画を観ているというより、スクリーンを通して大林監督の頭の中に連れていかれた感じです。3時間くらいずっと大林監督の夢の中にでもいるような思いでした。

 映画を観ているのか、詩を読んでいるのか、絵画を観ているのか、アニメなのか、ミュージカルなのか、だんだん分からなくなってくる。映画というのは総合芸術だなんてのは聞いたことがあります。でもここまでいろんなものが混ざりあった世界はなかなかありません。大林監督の思いを一つ残らず詰め込んだような映画でした。

 そういう描き方ですから、監督の人柄とか優しさがひしひしと伝わってきます。戦争映画ですけど暗い感じではありません。どちらかというとミュージカルとか喜劇を観ている華やかさです。でも戦争を肌で知っている監督が描くから怖さも悲しさも痛いほど伝わってきます。大林監督は広島の尾道出身ですので戦争の怖さを身をもって体験しているんですね。

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