パリの窓

小便臭が消毒薬のにおいに コロナ効果実感

 日本に毎夏帰省する知人が、「実家に『帰ってくるな』といわれた」としょげていた。いつもは「パリから来た娘一家」を自慢する両親も、今年は「外国帰りはコロナが危ない」と近所に噂されるのを恐れているという。ああ無情…。

 気を取り直して、パリ観光も悪くない。いつも夏は世界中から来る観光客でいっぱいだが、今はすいている。「予約不可能」といわれた人気レストランもすぐOK。エッフェル塔は待たずに上れた。数年前に来たときは、頂上まで2時間かかった。インド人団体客の熱気に押され、タージマハルに来たような気分になったが、今ならパリの風を受けて静かにセーヌ川を眺められる。「これから世界はどうなるのか」と思いをはせたりして。

 感染対策で、どこも掃除が行き届いているのもよい。ベルサイユ宮殿に行ったら、金ピカぶりが一段と増した。都市封鎖で閉館中、有名な「鏡の間」は13年ぶりにすす払いしたとかで、新築のような輝き。ルイ14世が出てきそうだ。

 なんといっても、変わったのはパリの地下鉄。「名物」だった構内の小便臭が消えて、消毒薬のにおいがする。しかも、東京の地下鉄並みに明るい。これまで「暗くて風情がある」と思っていたが、実はホコリが積もっていたせいだった。コロナ効果を実感する。(三井美奈)

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