韓国のいわゆる徴用工訴訟で、賠償を命じられた日本企業に対する資産売却手続きがまた一歩進んだ。
そもそも応じる必要のない要求だ。賠償命令自体が歴史をねじ曲げ、日韓両国間の協定を無視した暴挙であり、容認できない。
現金化により日本企業の資産が不当に奪われるなら、政府は厳格な対韓制裁に直ちに踏み切るべきだ。韓国から撤回と謝罪があるまで緩めてはならない。
韓国最高裁は平成30年、新日鉄住金(現日本製鉄)に計4億ウォン(約3700万円)の賠償を命じた。資産差し押さえ命令の「公示送達」の効力が4日発生し、韓国内の同社資産の現金化への手続きが進行した。
日本製鉄が即時抗告するのはもっともだ。資産鑑定などの手続きもあり現金化にはなお時間がかかるとされるが、ことは一企業の問題にとどまらない。
菅義偉官房長官が、韓国最高裁の判決と一連の司法手続きを「明確な国際法違反」と批判し、「あらゆる選択肢を視野に入れて、引き続き毅然(きぜん)と対応していく」と述べたのは妥当である。
現金化の場合の対韓制裁実施を示唆したもので、韓国は日本政府の決意を軽んじてはならない。
賠償を命じた韓国最高裁の判決は信じ難い代物だ。「不法な植民地支配と侵略戦争遂行に直結した反人道的不法行為」などと決めつけている。
国民徴用令に基づき、昭和19年9月以降働いていた朝鮮半島出身者がいたのは事実だが、韓国側のいうような強制労働ではない。賃金の支払いを伴う合法的な勤労動員にすぎず、内地人も同じように働いていたのである。
その上、40年の日韓国交正常化に伴う協定で、両国は一切の請求権問題について「完全かつ最終的に解決された」と明記した。協定に伴い日本は無償3億ドル、有償2億ドルを韓国に支払った。
無償3億ドルには個人の被害補償の解決金が含まれている。個人補償を必要とするなら、支払うのは日本側ではなく韓国側だ。
にもかかわらず、文在寅政権が「司法判断を尊重する」などと責任転嫁するのはおかしい。日本企業の韓国離れが進んでいるが、司法の暴走を助長し、両国関係の基盤を掘り崩している文政権が招いた事態である。