国内で緊急事態宣言発令後も新型コロナウイルスによる感染拡大が続く中、感染の有無を調べるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査の実施件数が足りないとの批判が高まっていた。
PCR検査は二次感染を防ぐ観点からも実施体制の拡充が重要で、政府は実施可能数を1日2万件に増やす方針だったが、実際の検査実施数は4月中旬時点で1日9000件程度にとどまった。安倍晋三首相は30日の参院予算委員会で、「目詰まりや地域ごとの差がある」と述べ、検査体制が不十分との認識を示し、改善を急ぐ意向を示した。
大阪府は23日、車に乗ったまま行える「ドライブスルー方式」のPCR検査を始め、注目を集めた。
「大型連休を前に今年は違う取り組みをしなければなりません」
小池百合子東京都知事は、25日から5月6日までを「いのちを守るSTAY HOME週間」と宣言。首都圏3県とともに行楽や帰省などの外出を控えるよう呼びかけ、企業には連続休暇やテレワークの推進による通勤抑制を求めた。
人々に「巣ごもり」を強いたステイホームは、働き方やコミュニケーションの在り方も変えていく。
注目集める「抗体検査」
鼻やのどから採取した検体の遺伝子を増幅し、新型コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査は、その有効性が指摘されながらも、国内では実施体制の整備が遅れていた。
安倍首相は30日の参院予算委員会で、「医師が必要と判断しても、もしかしたら行えていないかもしれない」と述べ、地方とも協力しながら改善を急ぐ意向を示した。加藤勝信厚生労働相も「反省しなければならない」と語った。
厚労省は26日、PCR検査の数を増やすため、感染拡大が収まるまでの時限措置として検体採取を歯科医師にも認める方針を決定。首相は28日の衆院予算委員会で、無症状でも検査での保険適用を現場に周知していく考えを強調した。
世界ではこの時期、抗体と呼ばれるタンパク質が体内に存在するか確認して感染歴を調べる抗体検査が注目された。英国などでは同検査を基に「免疫証明書」を得た人を通常の生活に戻して経済再開につなげようとする動きがあった。
4月22日 専門家会議が「オンライン帰省」呼びかけ
「ビデオ通話でオンライン帰省」「筋トレやヨガは自宅で動画を活用」「飲み会はオンラインで」
政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が22日に国民に呼びかけた、日常生活を見直す「10のポイント」の一部だ。緊急事態宣言が東京・大阪など7都府県で発令されてから約2週間たっていたが、人と人との接触を8割削減する目標を達成するため、不要不急の外出自粛やテレワークの徹底による「ステイホーム」を訴えた。
緊急事態宣言が発令されて以来、全国で飲食店などの休業が浸透したが、それでもストレスのはけ口を求める一部市民の受け皿ともなった形で営業を続行する店が目立つ業種もあった。その筆頭がパチンコ店で、大阪府は感染リスクの高い「3密」(密集、密閉、密接)になりやすいと判断し、吉村洋文知事が24日、休業要請に応じない府内の6店舗を公表した。吉村氏は「最後の手段として府民の命を守るため判断した」と異例の措置を説明した。
情報番組の顔だった女優、岡江久美子さんが23日、新型コロナによる肺炎で亡くなった。享年63。「こんな形の帰宅は本当に残念で、悔しくて、悲しいです」。翌日、遺骨を抱えた夫の俳優、大和田獏さん(69)の言葉は視聴者の涙を誘った。大和田さんは火葬に立ち会えず、葬儀関係者が遺骨を玄関先に届けた。感染を防ぐためとはいえ、「最後の別れ」もかなわぬ過酷な現実だった。
4月30日 緊急事態宣言延長の意向表明
海外では米東部ニューヨーク州の外出制限が22日で1カ月となり、「医療崩壊」を脱した。イタリアやフランスなどでは5月から外出禁止令を段階的に解除する準備が始まった。
だが、日本の戦いはむしろこれからだった。政府は23日に発表した4月の月例経済報告で、約11年ぶりに最も厳しい「悪化」の表現を使って国内景気判断を下方修正。景気が後退期に入ったことを事実上認めた。
「ある程度の持久戦は覚悟しなければならない」
安倍首相は30日の記者会見でこう述べ、5月6日を期限としていた緊急事態宣言を延長する意向を表明した。宣言発令から1カ月で日常に戻るという希望的観測は崩れた。