主張

10代の薬物蔓延 大麻の危険性甘くみるな

 薬物事犯による若者の摘発が相次いでいる。

 安易な気持ちで手を出せば重大な結果を招く。薬物の使用はいずれ依存を招き、肉体的にも精神的にも健康を害す。甘くみてはならない。

 愛知県警は7月、県内の駅で倒れていた18歳の男子高校生の尿から合成麻薬LSDの反応があったことから、麻薬取締法違反の疑いで逮捕した。

 山梨県警は富士河口湖町のペンションでLSDを使用し、大麻を所持した都内の大学生ら4人を摘発した。新潟県警は県内の自宅で大麻草を栽培したとして19歳の女子高校生を大麻取締法違反の疑いで逮捕した。種はインターネットサイトで購入したという。

 新潟県警は6月にも、新型コロナウイルスの影響で帰省中だった県外の大学生を含む19歳の少年5人を大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕していた。

 大阪では6月、大麻の密売をネット上で持ち掛け、購入に現れた男子大学生を鉄パイプで殴り現金を奪ったなどとして、少年5人が強盗致傷容疑で逮捕された。

 警察白書によると、大麻取締法違反の検挙者は令和元年、統計上過去最多となる4321人を数えた。特徴は他の薬物事犯と比べ、初犯者や20歳代以下の若年層が占める割合が高いことだ。

 警察庁が平成30年に行った大麻取締法違反の検挙者に対する調査では、未成年者の初使用のきっかけは「誘われて」「好奇心・興味本位」「その場の雰囲気」とする回答が多く、危険性についての認識は希薄だった。

 ネット上などに大麻の無害説などが大量に流れていることも影響しているのだろう。だが、踊らされてはならない。大麻に含まれるTHCという成分によって感覚や手足のまひ、思考の分裂、重度の妄想や幻覚を引き起こすことが分かっている。

 特に若年層での使用は、成人になったときの統合失調症発症リスクや知能障害に影響を与える可能性がある。何より国内では大麻取締法によって所持、譲渡、栽培などが禁止されている。大阪の事件のように違法行為は新たな犯罪を誘発する危険性もある。

 厚生労働省によれば昨年に押収した覚醒剤は初めて2トンを超え、コカインの押収量も過去最多となった。大麻はこうした薬物使用への入り口ともなり得る。

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