コロナ時代の国会

(中)遠隔投票 議論は尻すぼみ

 「採決はさせない。『3密』と批判されても物理的に抵抗したい」

 5月11日、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案をめぐる与野党の攻防が激しさを増すと、立憲民主党の安住淳国対委員長は記者団にこう強調した。

 国会では対決法案が採決を迎えると、議員が委員長席の周囲に群がりマイクの奪い合いを行う光景が珍しくない。同改正案は与党が採決を見送り、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言下で「3密での攻防」は回避された。自民党関係者は「そんなことをしていたら国民からどんな目で見られていたか」と振り返る。

柔軟な海外議会

 野党による物理的な抵抗が可能なのも、議員が本会議場や委員室に参集することが前提となっている。法案の審議から採決に至るまでオンライン化は進んでいないが、海外に目を向けると、遠隔投票を制度化している例は多い。

 議会制民主主義の元祖とされる英国の下院は4月からテレビ会議形式による審議を始めた。約700年を誇る伝統の中で初めてだったが、ジョンソン首相さえ感染した事態を考慮した。

 米国下院も5月、コロナ危機が収束するまでの間、本会議での採決の代理投票や委員会へのリモート参加などを認める議事運営規則の変更決議案を賛成多数で採択した。代理投票は欠席議員が同じ党の同僚議員に投票を依頼。1人の議員が最大10人まで代理投票を引き受けることができる。

 スペインではコロナ禍よりも前の2012年に下院、13年に上院で遠隔投票が可能となった。妊娠、出産、重大な病気など遠隔投票ができる場合は限られるが、事前に申請して認められれば電子署名による本人確認を行い、投票できる。

 世界の重要課題を協議する先進7カ国(G7)や20カ国・地域(G20)の首脳も、コロナ禍を受けテレビ会議を導入した。

 遠隔投票は、国内でも以前から議論があった。平成30年6月、自民党の小泉進次郎衆院議員らが超党派の「『平成のうちに』衆議院改革実現会議」を立ち上げた。翌7月には、登院できない妊娠・出産前後の女性議員の代理投票を認める提言をまとめた。

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