ポンペオ米国務長官が7月23日に行った演説で、中国への批判のトーンを一段と高め、習近平国家主席をも名指しして「全体主義の信奉者だ」などと指弾した。演説は、歴代米政権の対中アプローチは「失敗だった」と断じ、今こそ抜本的に政策を転換させる時だと訴えた。米紙はこの新段階の強硬姿勢について、中国指導部が軽く見れば「過ちになる」と警告し、中国の官製メディアは演説は「妄言」と猛反発した。
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米国 大統領選対策と見くびるな
ポンペオ米国務長官による対中政策演説について、米紙ウォールストリート・ジャーナル(7月26日付)は「中国の新たな現実」と題した社説で「ポンペオ氏は、中国が大きく開かれた国に変わっていくことに賭けた、過去数十年にわたる米国の取り組みが行き詰まったことを鮮明にした」と指摘し、演説内容を評価する立場を示した。
1972年にニクソン大統領(当時)が米中和解に踏み切って以降、歴代米大統領は中国に経済交流や対話を通じて透明性や説明責任を求め、国際社会の責任ある一員になることを促してきた。
社説はしかし、そうした試みは最近の香港情勢や、華為技術(ファーウェイ)など中国通信企業による諸外国からの情報窃取問題などからも、破綻は「既に明白となっていた」と強調する。
中国は、ハイテク分野で世界的覇権を確立するという野望にとどまらず、軍事分野でも東シナ海や南シナ海、インドとの国境地帯でも挑発行動を活発化させている。
トランプ政権の対中政策の根底にあるのは「私たちがいま屈服すれば、私たちの子孫は中国共産党の言いなりになってしまう」(ポンペオ氏)という危機感だ。その意味で米政権の行動は、11月の大統領選をにらんだ人気取りといった矮小(わいしょう)な動機だけに基づくものではない。