政府が災害の恐れがある地域で、不動産開発や住居販売の規制に乗り出す。浸水や土砂崩れなどの災害が発生する危険性が高い地域での開発などを抑えて被災リスクを低減するのが狙いだ。
8月下旬から、浸水想定区域で住宅を販売する際、水害リスクがあることの説明を義務付けて購入者に注意を促す。
2年後には、土砂災害特別警戒区域などでの新規の施設建設を原則禁止する。
豪雨や台風などによる大規模な災害が増えており、河川氾濫などの被害も増大している。危険な地域における住宅などの開発や販売を規制するのは当然だ。
今後は災害が想定される地域に立地している既存の住宅や施設などの移転も促す必要がある。そのためにも災害ハザードマップなどを駆使し、地域の危険情報を住民で共有しなくてはならない。
国土交通省は8月下旬、不動産業者に対し、住宅購入や賃貸住宅の契約などの前に浸水など水害リスクの説明を義務化する。すでに土砂災害や津波のリスクについては、宅地建物取引業法で重要事項説明の項目に含まれており、新たに水害の危険性も加える。
ここ数年の大規模水害では、浸水想定区域での被害が相次いで発生している。同省では宅建法で水害リスクの説明を義務化し、これに違反した場合には業務改善を命じる。購入者や入居者が事前にリスクを知ることで防災意識の向上につなげたい。
先の国会で成立した改正都市計画法では、土砂災害特別警戒区域などリスクが高い場所での建築規制を強化し、事務所や店舗などの開発を原則禁止する。2年後の厳格化までに周知徹底を図り、リスクある地域での新規開発を抑制する効果を高める必要がある。
災害リスクを抱える地域に対する開発規制は、自治体や地元業者などの反対で見送られてきた。市街地の郊外で宅地開発すれば、若年層向けに比較的安い価格で住宅が販売でき、域内の人口も増えるメリットがあるからだ。
だが、そうした地域に居住すれば、自然災害に見舞われるリスクも高まる。自らが暮らす地域にどのような災害リスクがあるのかを認識することが重要である。それが災害時の早期避難などにもつながる。自治体もそうしたリスク情報の提供に努めるべきだ。