【香港=藤本欣也】新型コロナウイルスの感染拡大が続く香港で3日、中国当局による医療支援活動が始まった。中国としては、香港国家安全維持法(国安法)の導入で悪化した香港市民の対中感情を改善したいところだが、「中国側にDNAのサンプルを収集されるのでは」との新たな懸念も生じている。
香港入りしている中国当局の先遣隊は同日、PCR検査の強化へ調整を進めた。1日あたり1万人前後という現在の検査数を、同10万~20万人に増やす。
香港の有力紙、明報は3日、消息筋の話として「中国側は全香港市民の検査を望んでいる」と報道。香港の人口は約750万人に上るが、中国系紙、文匯報も「中国当局は全ての香港市民を無料で検査する」などと報じている。
これに対し、香港民主派の新民主同盟は「検査で個人のDNAサンプルが中国側に収集されることを心配する市民は少なくない」として全民検査に反対する。
香港では、中国当局が新疆ウイグル自治区でウイグル系住民のDNAデータを収集し、住民管理を徹底している問題が知られている。7月、香港警察が国安法違反の疑いで逮捕した市民のDNAを採取していることが判明した際も、懸念の声が上がった。
香港政府は「中国は純粋に検査を支援するだけだ」と強調する。だが、民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏は、「中国当局は新疆の監視システムを香港にも適用しようとしている」と指摘し、香港の新彊ウイグル自治区化に警鐘を鳴らしている。