児童虐待~連鎖の軛⑤

子供第一 命守る両輪 児相と警察はざま埋める

虐待が起きた家庭に必要なのは親子の分離なのか、親子へのサポートなのか。子供の未来のためには「介入」と「支援」の両輪が求められる(南雲都撮影、写真は本文と関係ありません)
虐待が起きた家庭に必要なのは親子の分離なのか、親子へのサポートなのか。子供の未来のためには「介入」と「支援」の両輪が求められる(南雲都撮影、写真は本文と関係ありません)

「警察への共有は少し待ってもいいのでは」

警察官の立場のまま西日本の児童相談所(児相)に勤務する佐藤順平警部補(39)=仮名=は、同僚の児相職員の発言が引っ掛かった。

昨年冬、虐待を受けた疑いのある子供への具体的な支援を話し合う朝の会議で、2歳の男児が議題に上がっていた。脚の骨折があり、診察した病院から通告があったのは前日夜。病院によると、両親は「なぜけがをしたか分からない」と話しているという。

会議の段階で明らかに虐待を示す情報はない。同僚の発言は、状況がよく分からない中で捜査を担う警察との情報共有は時期尚早ではないか、という提案だが、佐藤さんは落ち着いた口調で言い切った。「原因が分からないからこそ、すぐに共有すべきです」

同僚に情報を抱え込もうという意図などなく、タイミングを見計らって共有するつもりだったのは分かっている。ただ、両親は息子が大けがをしているにもかかわらず、やけに落ち着いた様子だったと病院から報告があった。不審点があり事件の可能性を否定できない以上、いち早く共有することが証拠を収集する捜査当局にとってプラスに働くのは明らかという判断だった。最終的に全会一致で、児相が両親から直接事情を聴く前に共有することが決まった。

佐藤さんは県内で児相に派遣されている唯一の警察官。言うべきことは言うという姿勢は本来の職場である警察に対しても同じだ。

一時保護せず

警察からの情報の窓口となるのも佐藤さんの重要な役割だ。昨秋、16歳の少女が母親の内縁の夫から暴行を受けた。顔を殴られ、骨折こそしていないが決して軽くはないけが。地元の警察署から情報提供を受け、佐藤さんは「逮捕を視野に動く」と直感的に思った。