児童虐待~連鎖の軛③

家庭復帰と親失うリスク 児相、難しい判断 

施設では、複雑な家庭環境で育った子供たちの間でいじめやトラブルも珍しくなく、里親も傷ついた子供を受け止めきれる保証はない。長期分離中も児相は家庭復帰の道を探って支援を続けるが、復帰できないまま18歳になれば、施設を出て自立を強いられる。

長期分離のリスクと家庭復帰による虐待再発のリスク。2つを天秤(てんびん)にかけつつも、支援の目を増やして後者のリスクを軽減し、家庭へ帰す。

女性職員は「親を失うことによる心の穴は埋められず、長期分離は子供にそれだけのものを背負わせることになりかねない。家庭環境が改善される余地が少しでもあるなら、家庭復帰を選びたい」と考えている。

理想は遠く

陽太ちゃん兄弟が家庭に戻って1年あまり。父親は家族を束縛しないようになり、兄弟は元気に育っている。支援といっても、必要なのは家庭への小さな「介入」の連続。毎週だった児相の家庭訪問も月1度に減ったとはいえ、新型コロナウイルスの感染が拡大する中でも続けられた。

「子供が家庭で成長する姿をみるとほっとする」。児相の橋本信二所長(52)=仮名=は、介入によって改善した家庭を1年間支えてこられたことに、ひとまず安堵(あんど)感をにじませる。

橋本さんのもとでは、緊急対応だけで7人の担当ケースワーカーが計約50件を同時進行。家庭復帰した後、面談などの長期的な支援は別の10人超が、6自治体分を受け持つ。家庭訪問や面談は1件だけで数時間に及ぶこともあり、児相が各家庭に丁寧に向き合い続けることは難しい。

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