児童虐待~連鎖の軛③

家庭復帰と親失うリスク 児相、難しい判断 

安定した生活のなかで陽太ちゃんの成長を見守る一方、児相は兄弟を両親の元に帰すための環境づくりを進めた。父親への指導だけでなく、自治体と連携して兄には保育所入所の手続きを進め、陽太ちゃんには母親と通える地域の子育て支援センターを見つけた。見守りの目を増やすことで、子供や母親のSOSを見逃さないようにするためだ。

児相は原則2カ月間までの一時保護の期間中、子供が家庭で暮らせるかどうかを判断する。両親に会うのを嫌がる陽太ちゃんの様子に家庭生活を不安視する意見もあった。しかし、児相は両親が指導を受け入れたことも考慮し、保護から2カ月後、兄弟を両親の元へ帰すことを決断した。

最善の利益

児相が関わりながら子供を守れなかった事件を教訓に、児相は積極的に一時保護に踏み切るようになっている。虐待での一時保護は10年間で約1万4千件増え、平成30年度は過去最多の約2万5千件に上った。

だが、そのうち大半は、陽太ちゃん兄弟のように一時保護が終われば家庭に戻している。児童福祉施設や里親に子供を預ける長期の親子分離について、児相は慎重な姿勢を貫き、虐待対応全体からみるとわずか3%程度にとどまる。

背景にあるのは、子供は家庭で育つのが第一とする児童福祉法の理念。ただ、家庭復帰は「ありき」の選択肢ではない。陽太ちゃんに関わるベテラン女性職員は「簡単に子供を帰すな」という世論を意識させられるという。同時に、「施設や里親にもリスクはある。関係機関が安心するためだけに分離してはならず、大切なのは子供の最善の利益だ」とも感じる。

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