米国による自説の主張について、ロイター通信は、「この地域(ASEAN)における米国外交の新たな取り組みを示すものだ」と分析。トランプ米大統領が東アジアサミット(EAS)に3年連続で欠席するなど、ASEAN加盟国には「米国はASEANを軽視している」との疑念も根強い。米国側には加盟国に寄り添う姿勢を見せることで、不信感を払拭したい思惑が見え隠れする。
中国が経済的な影響力を拡大する中、ASEAN加盟国の対中姿勢にはばらつきがある。南シナ海の領有権問題に直面するベトナムは中国に厳しい態度で臨む一方、巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて巨額の融資を受け取るカンボジアやラオスは親中的な態度を隠していない。
ただ、南シナ海で中国が実効支配を強める動きは、ASEAN加盟国間の温度差を徐々に埋めつつある。インドネシアは5月、中国が南シナ海に一方的に設定した境界線「九段線」に反対する書簡を国連に送付。シンガポールのリー・シェンロン首相も米外交誌への寄稿で、中国の影響力が増大しても「南シナ海で複数の国と領有権を争っており、(米国の)役割を引き継ぐことはできないだろう」と中国の軍事的拡大にくぎを刺した。