2地域居住と2拠点居住は何が違うのか。山梨県の担当者は「『平日は都市部、土日は山梨で野菜作りやレジャー』ではなく、2拠点居住はどちらの拠点でも働くスタイル。これからは、テレワークによって山梨の比重が高くなる」と説明する。
ある県幹部は「高齢化率が高い山梨にこれ以上シニア世代が増えるより、子育て世代に住んでもらって、住民票も移してくれるほうが歓迎だ」と明かした。
田口さんは「テレワーク部屋を作ったり、LAN回線を敷くために費用がかかった。上下水道が通っていないとか、ごみ集積所がないといった不便はある」と話し、2拠点居住のための行政の支援を求めているが、暮らしにはおおむね満足しているという。
将来は完全移住も
「誰も教えてくれない田舎暮らしの教科書」の著書があり、田口さんの土地探しも助言した移住アドバイザーの清泉亮(せいせん・とおる)さんは「田口さんの2拠点居住がうまくいったのは、仮住まいして土地を探したから」と解説する。
「少なくとも1年間その地域に住んで、春夏秋冬を経験するのがお薦め。いきなり家を建てて、奥さんが『こんな寒い場所は嫌』と出て行ったケースをたくさん見てきた」という。
田口さんは「私のように、都市部に勤めながら2拠点居住するのがいい。完全に移住して職を探そうと思っても、いい仕事はない」と話す。
清泉さんは「地元の若い人が生活できているのは、実家に住んでいて出費が少ないという要素もある」とした上で、「県は2拠点居住の誘致に力を入れるべきだ。テレワークが進めば山梨1拠点の完全移住につながる」と語った。