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ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患っていた京都市の女性の依頼を受け、薬物を投与し殺害したとして、嘱託殺人の疑いで2人の医師が京都府警に逮捕された。闘病生活を続けていた女性は以前から「安楽死」を望んでいたという。患者の苦痛を取り除くため、医師が死期を早める「安楽死」をめぐっては、これまでも殺人罪で医師らが有罪となっている。一方、終末期医療のあり方についてはルール作りの必要性が指摘されているが、議論は深まっていないのが現状だ。
国内で安楽死が大きな注目を集めたのは平成3年、東海大病院に末期がんで入院していた患者の家族の求めで、医師が薬剤を投与、患者が死亡した事件だ。
医師が殺人罪で起訴され、法廷では安楽死の違法性が争われた。横浜地裁は7年、医師に執行猶予付きの有罪判決を言い渡し確定。判決は、意図的に死を早める「積極的安楽死」が許容される要件として(1)耐え難い肉体的苦痛がある(2)死期が迫っている(3)苦痛を除去、緩和する方法がほかにない(4)患者の明らかな意思表示がある-の4要件を示した。
10年には川崎市の川崎協同病院で、低酸素性脳損傷で意識が回復しない患者の気管内チューブを医師が抜き、筋弛緩(しかん)剤を投与して死なせる事件が発生。公判では、家族の要請に基づいて延命治療を中止したと認定された一方、「法律上許される治療中止には当たらない」として殺人罪で有罪判決が下された。
現行の刑法では、医師が死を望む患者に致死性がある薬剤を投与したり、処方したりする行為は、殺人罪や自殺幇助(ほうじょ)罪にあたる可能性が高く、これまでも安楽死をめぐる事件では、こうした罪が適用されてきた。