不確実な世界を生き抜く力を子供に 「本の森」が果たす役割 建築家・安藤忠雄

 パンデミックの渦中で改めてあぶり出された現代世界の惨状、危機に際して求められた国際協調とかけ離れた自国第一主義の蔓延(まんえん)、金のあるなしで命が決まると言わんばかりの経済格差、その格差と連動する失業率、理不尽極まりない人種差別-といった問題は、もうずっと前から議論されていたものばかりだ。

 「分断」と呼ばれるこうした状況は人々の心にずっと暗い影を落としており、それがコロナ禍のストレスで爆発。日本でも自粛期間中の家庭内暴力、地域内での感染者やその家族に関する風評被害、誰よりも感謝すべき医療従事者への中傷といった絶望的ニュースが流れるに至った。

 「コロナ後の世界」というが、結局、問題の本質は、今日の世界を動かしている仕組みそのものの破綻にある。その仕組み、効率至上のグローバル資本主義を可能にしているのは、情報技術の急激な進展だ。この技術革新がもたらす変化とは、多くの識者が指摘する通り、19世紀に世界を揺るがした産業革命に匹敵するような激しい変化なのだろう。それがいかなる形の社会に行き着くのか、誰にも先は見えない。

 そんな荒波を近視眼的な、短期利益追求の考えで乗り切るのは難しい。「人間の幸福とは何か」、「世界はどうあるべきか」と根源にまで立ち返り、考え抜かれた確固たるヴィジョン。その実現に向け自ら先頭に立ち、自ら決断し、自らの言葉で人々を導く力強いリーダーシップが求められている。