原発避難いじめの教訓生かせるか コロナで差別・偏見、再び 神奈川 - 産経ニュース

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原発避難いじめの教訓生かせるか コロナで差別・偏見、再び 神奈川

 菌をばらまいているやつはこらしめなきゃ、と思い込んでいるのでしょうか-。新型コロナウイルスをめぐる報道で、子供と公園に行った医療従事者に来ないよう言った人の存在を知った横浜市の男子生徒(16)は、少し冷めた表情で語った。東京電力福島第1原発事故で福島県から避難し、目に見えないものへの不安から排除に走る行為の恐ろしさを被害者として経験していた。

 新型コロナの感染再拡大への危機感が高まる中、医療関係者や感染者への差別・偏見の解消が課題となっている。不安が社会を覆い、「リスク」とみなすものを敵視する風潮は東日本大震災のときと似ている。震災後の出来事を振り返り、教訓を読み取る。

 ◆福島から転入

 「近寄るなよ」。男子生徒が平成23年に転入した横浜市立小学校の2年の教室。近くを通ると同級生が嫌がった。「菌」と呼ばれるようになり、同じ時期、自宅のポストに「放射能をばらまくな」と書かれた紙が投げ込まれた。

 5年生になると、状況はさらに悪化した。「賠償金、もらっているんだろ」。同級生の言葉に、反抗すればいじめがひどくなると思った。一緒に行ったゲームセンターの利用料などを全て負担し、お金はこっそり家から持ち出した。

 学校に行けなくなっていた6年生のとき、心に積もった怒りと悔しさをはき出すようにノートに書き殴った。「ばいきんあつかいされて、ほうしゃのうだとおもっていつもつらかった。福島の人はいじめられるとおもった」。中学生になった28年、公開した手記がきっかけとなり、福島から避難した各地の子供たちが次々と「原発避難いじめ」の実態を証言し始めた。

 コロナ禍でもいじめが起きた。今年1月、中国・武漢市から帰国した感染者を受け入れた千葉県鴨川市の病院では、職員から「子供がいじめられている」と相談があった。市教育委員会が小中学校でアンケートを実施すると、「コロナにかかっている」とからかわれるなどのいじめが5件確認された。

 ◆急に大声上げ

 横浜市の男子生徒の代理人を務める飛田桂弁護士は「警戒感に満ちた社会の中で、子供たちは親の緊張をつぶさに感じ取っている」とし、「集団感染が起きた病院や職種について親が『迷惑だよね』といった言葉を不用意に発すれば、子供は簡単に行動に移してしまう」と指摘する。

 男子生徒は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、今も病院に通う。夜は眠れず、家族とたわいない会話をしていても急に大声を上げることがあるという。母親は静かに語る。「この子が何年先まで苦しみ続けるのか…。大人が差別を生まない環境をつくれなければ、子供の心に一生影響が残る」

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 ≪原発避難いじめ≫

 東京電力福島第1原発事故で福島県から横浜市内に自主避難した男子生徒が、転居した小学2年時からいじめ被害に遭っていた問題。当初はいじめと認められていなかった金銭授受もその後、いじめと認定された。