7度目の正直で直木賞 馳星周さん ノワールの名手

 直木賞受賞が決まり、喜ぶ作家の馳星周さん=15日午後、北海道浦河町
 直木賞受賞が決まり、喜ぶ作家の馳星周さん=15日午後、北海道浦河町

「ノワール(暗黒小説)の名手」が、7回目にして直木賞を射止めた。作家の馳星周(はせ・せいしゅう)さん(55)。

「直木賞を考えて小説を書いてきたわけではないが、(受賞は)純粋にうれしいですね」

受賞作は人と犬との絆を描いた連作短編集。東北から熊本に向かい旅をする聡明(そうめい)な犬が、東日本大震災の被災者や心を閉ざした少年など、救いを求める人々に寄り添う姿を描いた。

「震災を書くことは日本人の小説家の使命。これからも折に触れ書いていく」

自身、犬との生活のために長野県軽井沢町へ移住した。現在も妻と愛犬2頭と暮らす。受賞作で描きたかったのは魂の絆だという。

「犬はかけがえのない家族であり、無償の愛のお師匠さん。人と人との間に無償の愛はないけれど、犬は無条件に愛してくれる。魂のつながりをストレートに書きたかった」

書評家などを経て、新宿の裏社会を描いた平成8年のデビュー作「不夜城」が大ヒット。「『本当にノワールに向き合っているのは俺一人』という自負が長年あった」と振り返る。そんな気負いが変わったのは40代半ば。出版不況が始まったことを契機に「肩肘張らなくてもいいとようやく思えるようになった」。

作家生活は20年以上。苦しかった時期を尋ねられると、「ないね」と即答した。昨今のコロナ禍でも幸い、仕事の発注が途絶えることはないという。

「小説を書くのが楽しい。天職に巡りあえたと本当に思ってるよ」(本間英士)