粂博之の経済ノート

外国人の就職活動 活路はどこに

 ただ、介護技能評価試験と介護日本語評価試験の両方に合格する必要がある上に「仕事の要求は細やかで厳しい。人気が高い職種ではない」。帰国を決断する求職者も少なくない。

地方にチャンス

 「これで大好きな日本に居続けられる」と笑顔をみせるのは、イタリア出身で東京都荒川区に住むロベルタ・ルッジェリさん(30)だ。9月から和歌山県白浜町の旅館で働くことになった。外国人の就職・採用をサポートするクロボ(大阪市)を通じて求人を知り、オンライン面接を経て内定を獲得したのだ。

 イタリアの大学で日本語を勉強したルッジェリさんは、昨年春に来日し日本語学校に入学。今年3月に卒業した。ようやく就職というところでのコロナ禍。英語、イタリア語、フランス語などの語学力をセールスポイントに商社などの面接までこぎ着けたが、いずれも直前にキャンセルされ、苦しい日が続いた。

 アルバイトをやめざるを得なくなり、収入は途絶えたが、内定でようやくひと息つける。「都会から地方の観光地に移ることに抵抗感はない。これからの研修が楽しみです」という。

 ルッジェリさんは苦労したとはいえ、運が良かった。「日本語学校の友達はあきらめて次々に帰国してしまった」という。

 今年3~6月、コロナの影響を受けてクロボに相談した外国人は589人で、うち就職が内定したのは11人にとどまる。それも同社がクラウドファンディングで得た資金をもとに、人材紹介の手数料をゼロにするキャンペーンを展開した結果だ。

人手不足は続く

 外国人の雇用情勢は厳しいが、クロボの北氏智弘社長によると「新型コロナの感染収束後に備えて採用したいという企業はある」。特に観光業界では、自然や伝統文化への関心が高い欧米からの観光客に対応できる人材が求められている。長らく人手不足に悩まされてきた地方のホテルなどは、今がチャンスかもしれない。

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