新型コロナウイルスの影響で雇用環境が悪化し、中でも外国人は厳しい状況に置かれている。インバウンド(訪日外国人客)を迎えるスタッフとして引く手あまただった時期と比べると求人は激減し、工場では観光業などで解雇された日本人との競争になっているという。人口減の進む日本には外国人労働者を引き寄せることが不可欠とされるが、現状では根付かず流出している。
しわ寄せ
「急に会社を辞めさせられた」「寮を出ないといけないけど、住むところがない」。外国人材紹介のアクセスHR(大阪市)には、フェイスブックを通じて深刻な相談が寄せられる。
「解雇した企業やその労働組合が支援すべきだが、大体は『あとは自分でなんとかしろ』と放り出すだけ」と同社の前川聡社長はあきれ返る。「外国人に親身になるのは、従業員と距離が近い、どちらかというと規模の小さな企業の方が多い」そうだ。
日本にとどまりたいという人たちは、同郷の友人の部屋や、外国人支援に取り組む団体などが整えたシェルターに身を寄せている。同社では、困窮した外国人を支援団体などにつなぎ、それから就職活動の支援に移ることになる。
厚生労働省によると、新型コロナの感染拡大に関連した解雇や雇い止めは、見込みを含めて7月1日時点で約3万人。この1カ月で約1万人増えた。業種別では、ホテルや旅館の宿泊業が多く、飲食業、製造業などが続く。前川氏によると「観光や飲食業界を辞めた日本人が、食品加工場など外国人の多かった職場に流れ込んでいる」という。
そうした中、アクセスHRでは、人手不足が深刻な介護分野を外国人に勧めている。前川氏は「日本に定住する道も開ける。経験を積めば、ベトナムなどでは帰国後に給料の高い日本企業で働くチャンスも生まれる」と説明している。