コロナ その時、

(4)苦渋の決断 東京五輪、史上初の延期 2020年3月16日~ 

【コロナ その時、】(4)苦渋の決断 東京五輪、史上初の延期 2020年3月16日~ 
【コロナ その時、】(4)苦渋の決断 東京五輪、史上初の延期 2020年3月16日~ 
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新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は3月後半、ついに世界最大級のスポーツと平和の祭典である2020年東京五輪・パラリンピックを、史上初の「延期」に追い込んだ。ホスト国である日本のトップとしての安倍晋三首相の苦渋の決断は、ウイルスとの戦いが長期戦に及ぶであろうことを、世界に深く印象付けた。

トランプ氏らと水面下で重ねた協議

東京五輪の延期が決したのは3月24日夜、安倍首相と国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長との電話会談だった。

首相は首相公邸からの電話で、「世界のアスリートが最高のコンディションでプレーでき、観客にとって安全で安心な大会とするため」と切り出し、1年程度の延期を打診。これに対し、バッハ会長は「百パーセント同意する」と応じた。

大会組織委員会の森喜朗会長やトランプ米大統領らと水面下での調整を重ねた上での決断。首相は会談後、周囲に対し「中止はなんとしても避けたかった」と心境を吐露したという。

このころ国内の感染者はまだ1000人を超えた程度だったが、世界では欧州を中心に30万~40万人規模に急拡大していた。

ぎりぎりまで開催模索

3月後半にかけて欧米で「ロックダウン(都市封鎖)」などにより新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込める動きが加速したが、医療崩壊も現実味を帯び始めた。感染者が急増し始めた国内も息苦しさを増していく。

東京五輪・パラリンピックについて、関係者はぎりぎりまで開催を模索していた。安倍首相は16日の先進7カ国(G7)首脳テレビ電話会議後、記者団に「人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証しとして完全な形で実施することで一致した」と強調。IOCも17日の臨時理事会で予定通りの実施を目指す方針を確認し、延期や中止の観測を否定した。

だが、世界のスポーツ界は選手団の命や健康を最優先とし、予選大会の延期も相次いだ。カナダのオリンピック・パラリンピック委員会は22日の声明で「選手の健康や安全や国際社会より重要なものはない」と東京五輪の1年延期を要望。すでに2020年に「完全な形」で開催できる可能性は限りなく低くなっていた。24日、安倍首相とバッハIOC会長との電話会談で延期が正式に決まった。

3月17日 フランス全土で外出禁止令

フランスは17日から全国で外出禁止令を実施。英国も23日に全土で外出制限を始めた。イタリアや米国では医療態勢の危機が鮮明となり、ニューヨーク州のクオモ知事が連日のように記者会見で支援を呼びかける姿が注目を集めた。

呼応するように国内でもイベントや外出の「自粛」がより強く発信されるようになる。23日には東京都の小池百合子知事が「ロックダウンを避けないといけない」と危機感を表明。25日に不要不急の外出自粛を要請し、27日には「(サクラは)来年も咲く」として、花見自粛も求めた。

政府は18日、秋篠宮さまが皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)となられたことを内外に宣明する「立皇嗣の礼」に関し、4月21日に予定された祝宴の「宮中饗宴(きょうえん)の儀」の中止などを決定。3月22日には政府などの自粛要請に反し、さいたま市で約6500人が観戦する格闘技イベント「K-1 WORLD GP」が予定通り開催され、批判を浴びた。

著名人の感染も内外で衝撃を与えた。ジョンソン英首相が27日、G7首脳で初となる感染を公表。新型コロナによる肺炎でタレントの志村けんさんが29日に死去(享年70)し、多くの国民が新型コロナを身近な恐怖と感じることとなった。

3月28日 首相「瀬戸際の状況」

実体経済への打撃もいよいよ広がってきた。19日には観光庁が2月の訪日客が前年同月比58%減ったと発表。26日発表された3月の月例経済報告からは、国内景気判断について「回復」の文言が6年9カ月ぶりに消えた。

安倍首相は28日の会見で国内感染の状況について「ぎりぎり持ちこたえている。瀬戸際の状況が続いている」と述べたが、自治体などから政府に抜本的な対応を促す声が強まる。大阪府の吉村洋文知事は29日、緊急事態宣言について、「出すかどうか、ぎりぎりの状態なら出すべきだ」とツイッターに投稿した。

31日、首相に面会した小池氏は記者団に、緊急事態宣言について「国家としての判断が今、求められている」と語った。事態は切迫の度を増し、ついに4月に決定的局面を迎える。

(3)2020年3月1日~ WHO、パンデミック宣言

(5)2020年4月1日~ 発令された緊急事態宣言

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