「伊予の小京都」といわれる愛媛県大洲市に、イタリア発祥の「分散型ホテル」が誕生した。「NIPPONIA HOTEL 大洲城下町」で、7月23日にオープン。江戸後期の豪商の家など歴史的価値の高い邸宅や町屋をホテルにリノベーション(大規模改修)し、「まち全体をホテルとして楽しむ」というものだ。新型コロナウイルスの感染拡大で冷え込んだ旅行需要を喚起する取り組みとして期待されている。
アルベルゴ・ディフーゾ
分散型ホテルは、イタリアの「アルベルゴ・ディフーゾ(分散したホテル)」という地域再生の取り組みが発祥とされる。地域の空き家や歴史的建物を改修し、宿泊施設などに利用して、町全体をホテルにする。
「NIPPONIA HOTEL 大洲城下町」の場合、市内の旧商家や古民家を耐震法に合致するよう改装し、計8棟として展開。内訳は、レストラン棟▽ホテルのフロント兼客室棟▽客室棟(2部屋)▽客室棟(4部屋)-が各1棟ずつと、1棟まるごと客室として貸し出すのが4棟。
食事は大洲市を中心に、地元・愛媛県の食材をふんだんに使う和風フレンチを用意。浴室は総ヒノキ風呂で、寝室は洋式でベッドルームになっている。宿泊費は夕・朝食つきで1人平均3万2千円。
大洲市中心部に位置し、白壁の建築物や石畳などレトロな雰囲気の街並みの中に誕生した同ホテル。周辺エリアには、複合連結式4階4層の天守を有する大洲城▽国指定重要文化財の臥龍山荘(がりゅうさんそう)▽明治時代建築の銀行本店を活用した観光施設「おおず赤煉瓦(あかれんが)館」▽人気テレビドラマ「東京ラブストーリー」のロケ地-など見どころが集まる。
江戸時代の豪商宅もホテルに
注目は、蔵と邸宅が客室棟として整備された村上邸。NHK連続テレビ小説「おはなはん」の舞台となったことから名付けられた「おはなはん通り」の突き当たりにある。
かつて、ロウの一種「木蝋(もくろう)」で財を成した豪商・村上氏の邸宅。江戸時代後期の建築とされるが、所有者は愛媛県を離れており、長く空き家となっていた。同ホテルを形成する8棟で最も大きい。