ブラジル大統領 感染公表 コロナ軽視変わらず

新型コロナウイルス検査で陽性だったと報道陣に明らかにするブラジルのボルソナロ大統領=7日、ブラジリア(ロイター)
新型コロナウイルス検査で陽性だったと報道陣に明らかにするブラジルのボルソナロ大統領=7日、ブラジリア(ロイター)

 【ワシントン=住井亨介】新型コロナウイルス感染の症状が出ていたブラジルのボルソナロ大統領は7日、検査結果が陽性だったことを明らかにした。現地メディアが伝えた。同国は感染者・死者とも米国に次ぐ規模に急増しているが、ボルソナロ氏の新型コロナを軽視する姿勢は変わらず、同国の深刻な状況に対する懸念は収まらない。

 CNNブラジルなどによると、ボルソナロ氏は5日から体調を崩し、6日に38度の発熱や疲労感などの症状を訴えていた。7日は、自ら首都ブラジリアの大統領府前で記者団に感染したと明らかにし、「熱は下がり気分はいい」と述べた。当面は公邸でテレビ会議などを通じて公務をこなす。

 ボルソナロ氏は新型コロナ感染症を「ただの風邪」とし、しばしば公の場にマスクをせずに現れることで知られている。7日は記者団の前でマスクを着用していたが、「ウイルスの心配も必要だが、経済のギアを入れていかなければならない」と経済優先の持論を展開。最後には「私の顔をみれば良好なことがわかる」と述べ、マスクを外した。

 ブラジルではボルソナロ氏が外出規制や都市封鎖は必要ないと主張し、商業活動の規制などを実施する地方自治体と激しく対立。国家規模で外出規制やウイルス検査は行われなかった。

 議会が成立させた公共の場でのマスク着用を義務付ける国レベルの法律にボルソナロ氏は拒否権を行使し、商業施設や学校などでの使用義務を定めた条項を削除。7月4日の米独立記念日を祝う米大使公邸でのイベントに参加した際にもマスクを着用せず、「ソーシャルディスタンス」(社会的距離)を保っていない様子が伝えられた。

 一部の州政府なども市民や経済界の要望を受け商業施設の再開に踏み切ったことなどから感染は拡大。感染者は160万人、死者は6万人を超えた。

 リオデジャネイロ州立大で政治学が専門のマウリシオ・サントロ教授はAP通信に対し、「ボルソナロ氏は民主主義国家の指導者の中で最も感染拡大の深刻さを軽視してきた」と非難した。

 一方で、世界保健機関(WHO)の米州地域事務局の担当者はボルソナロ氏の感染を機に「ソーシャルディスタンスの確保やマスク着用などの予防策の実行を強化すべきだ」とブラジルに呼びかけた。

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