一般公開されたので、6月25日に産業遺産情報センター(東京都新宿区の総務省第2庁舎別館)を訪れた。
センターは、平成27年に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」を記念し、近代日本の夜明けを貴重な資料とともに展示している。取材していると、加藤康子センター長がぜひこれを見てほしいと言う。
軍艦島で、炭鉱労働者として働いていた父親の思い出を語る男性のビデオ映像だ。鈴木文雄さん(享年86)で、昭和8年、軍艦島の通称で知られる長崎県・端島で生まれ、小学校4年まで島で育った在日韓国人2世である。
両親は韓国・慶尚南道出身で、父親は戦前から端島炭坑で「伍長」として坑務に従事後、在日本大韓民国民団の長崎本部団長を務めたこともある。
鈴木さんが語る。
「ぼく自身がまだ小さいからみなさんから『頑張らんね』といってかわいがられました。悪い負のイメージはありませんね。指さされて『あれは朝鮮人ぞ』とか、そういうことはまったく聞いたことはないですね」
父親については「父は『伍長』言うて、何人か部下がいた。おふくろから『お父さんは伍長か何かやけんが、少し給料はよかとよ』と。ちょっと誇りになって、給料をもらいに行っていた記憶があるんですよね」と話す。鈴木さんは父親を尊敬し、軍艦島出身を誇りにしていた。だからこそ、昨年亡くなる直前まで事実を後世に語り継ぐという強い意志を貫いたのだろう。
鈴木さんの長男、康一さんも同じ動画で、「なぜ根も葉もない嘘をここまで公にできるのかというのが理解できない。祖父とおやじの尊厳にかかわることだと思う」と話す。
根も葉もない嘘とは、韓国による事実に基づかない主張のことだ。韓国政府は、「人道に反するような強制労働があった」として、登録取り消しの検討を求める書簡を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に送付した。センターを訪れた在京韓国大使館幹部は「(朝鮮半島出身者の)犠牲者はどこだ」と注文をつけてきたという。
加藤氏は、「受け取る側の印象の問題だ。訪問者には複眼的にありのままを見てもらいたい」と語る。展示を見て、その言葉通りだと思った。