4日以降、九州地方を襲った豪雨は、熊本県南部など各地に甚大な被害をもたらしている。熊本県内では、5日午後の時点で14市町村の避難所86カ所に1502人が身を寄せる。新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、避難所を運営する各自治体は間仕切りの設置や、マスクや除菌シートの配布などの対策をとる。産経新聞社が全国の自治体に尋ねた感染症対策と防災への取り組みに関するアンケートでは、深刻化が著しい脅威の前に、手探りで対策を進める苦しい現状が浮き彫りになった。
九州・山口8県で、アンケート対象としたのは、各県庁所在地と政令指定都市の計9市。このうち多くの市で地域防災計画やマニュアル、ガイドラインに、感染症流行時の想定を書き込んでいるとした。いずれも、未整備とした福岡市も現在、改訂に向けた検討を進める。
一方、現状の計画で十分だと考えるのは宮崎、北九州など少数派だ。被害が深刻化する自然災害や、感染症の脅威に、何らかの対策の必要性を感じていることが分かった。
避難所の開設・運営では、新型コロナウイルス感染拡大防止を意識した対策が進む。多くの自治体が、間仕切りなどで区切った専用スペースの確保や、接触を極力避けるための動線確保、消毒や換気の徹底などを計画する。
また、福岡市は医療従事者の確保を大きな課題として挙げた。保健予防課の担当者は「感染症対策では経路の特定や感染者の隔離が重要だ。大規模災害では医療従事者の確保が行政だけでは困難だ」とする。
内閣府などは、避難所の過密対策として可能な限りの増設に加え、宿泊施設の活用、親戚宅への分散避難の呼びかけなどを検討するよう、都道府県に通知する。
各自治体は、一定の「自助」の必要性について、広報を強化する。また、大分市は、市内40施設が加入する業界団体と、災害時の施設利用について、協議を進めている。