「カーボン・ファーミング」の導入は、真の意味でのエコな農業を実現するか

この制度の支持者ですら、排出量や排出権の購入はいわば最後の手段だと考えなければならないと強調している。企業は環境汚染の低減に向けて生産工程を最適化したり、オフィスでの空調の利用を控えたり、配送車両をクリーンな燃料のクルマに切り替えたりするといった十分な努力をした上で、どうしても仕方ない場合に限って取引制度を利用すべきというのだ。

また、排出量取引で支えられている環境プロジェクトは、必ずしも成功するわけではない。このため、制度そのものが常に計算通りに機能するとは限らないとの批判もある。環境に配慮した燃料に切り替えることで排出量の削減に直接的に取り組む航空会社と、カーボンオフセットを購入するだけの航空会社とでは、実際に明確に区別されるべきだろう。

農業生産者の努力の大きな意味

NPOのForest Trendsが昨年公表したレポートによると、2018年の植林や畜産などによる温室効果ガスの削減量は、世界全体では二酸化炭素(CO2)換算で1億立方メートルにも及んだ。排出量取引での金額にすると、約3億ドル(約321億円)となる。

上院で審議中の「Growing Climate Solutions Act of 2020」と呼ばれる法案によると、農業生産者が温室効果ガスの削減計画を提出すると、外部機関がそれを検証する。計画が承認されれば、生産者は予想される削減量に合わせて排出量取引で売買されるクレジットを受け取る仕組みだ。なお、上院農業委員会の関係者によると、農業分野の1トン当たりの排出枠価格は、現在13~17ドル(約1%2C390~1%2C820円)程度だという。

バイブルのような農業生産者の努力は大きな意味をもつ。化学肥料の使用や植付期のあとに土をいじることで、土壌の炭素固定能力が下がってしまうからだ。農業による温室効果ガスの排出量は世界全体の24パーセントを占める。米国に限ると農業分野の排出量が全体に占める割合は10パーセント程度だが、これはほかの分野での排出量が全体を押し上げているからだ。

現時点ではカーボン・ファーミングの促進に向けた国レベルのプログラムは存在しておらず、バイブルもベレアーも独自に方法を模索してきた。バイブルは緑肥作物を育てたり不耕起栽培に切り替えたりするなど、土壌を利用した炭素隔離に取り組んでいる。不耕起栽培とは、農地を耕さないことで土壌中の炭素含有量を保つ農法だ。

利益を生む手段か、持続可能性の実現か

バイブルは炭素隔離や排出量取引のことを、利益を生み出す手段と捉えている。彼は「何かを生産するという役割を果たす上でのインセンティブが与えられ、わたしたちが生産するものによって排出量を削減できるなら、実行していくつもりです」と語る。「農業ではそれがうまく機能することが証明されています」

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