福岡大病院がECMOセンター設立 コロナ治療拠点、第2波に備え

ECMOセンターを設立した福岡大病院で、機器の運用などを説明する星野耕大副センター長
ECMOセンターを設立した福岡大病院で、機器の運用などを説明する星野耕大副センター長

 福岡大学病院(福岡市城南区)は1日、呼吸器疾患に特化した人工心肺装置「ECMO(エクモ)」の運用や、医療スタッフの技術向上を専門に担う組織を設立した。ECMOは、新型コロナウイルスの重症患者の治療で一定の実績を残している。治療拠点となるとともに、人材育成を進めることで、感染の第2波に備えて重症患者の救命率向上を目指す。(九州総局 中村雅和)

 設立したのは「ECMOセンター」。ECMOは重症の呼吸不全への対応や手術後の管理などに使われる人工心肺装置で、新型コロナ対応で病状が悪化した患者の救命に大きな役割を果たした。

 九州では初めて感染が確認された2月以降で十数人に使用され、そのうち同病院で使用したのが6人。1人は現在も治療中だが、4人は回復しているという。30日に記者会見した福大医学部の石倉宏恭教授は「ある程度の成果が出せたのではないか」と評価する。

 同病院にコロナに感染した重症患者が多く集まったのは、福岡県内で多く感染患者が確認されたことに加え、医療スタッフの人的な蓄積が大きい。

 2009(平成21)年に世界的に流行した新型インフルエンザの患者にもECMOは使用された。ただ、ECMOは単に機器を配備し、患者に装着するだけでは万全ではないという。血液を体外で循環させることによる血栓の発生を防ぐなど、きめ細やかな対処が必要だ。当時、国内の病院では使用する症例が少なかったため管理手法などが確立されておらず、救命率は欧米と比べて大きく下回ったという。

 その後、国内でECMOの配備数は急増。新型コロナウイルス感染拡大でECMOが注目されたことで、機器の配備はさらに進んでいる。ただ、装置を扱う医療スタッフの確保や育成が追い付いていないのが現状だという。

 同病院は2010年からECMO運用の先進地でもあるスウェーデンのカロリンスカ大学病院ECMOセンターに医師4人と臨床工学技士2人を派遣し、研修を重ねてきた。

 比較的短期間で装置を外すことができる術後管理と違い、重症肺炎など呼吸器疾患の場合、ECMO装着が長期間になる傾向があるとされる。定期的にベッド上で姿勢を変えて体液の滞留も防ぐなど、ノウハウがなければ症状改善につながらないという。同病院は今回、スウェーデンで研修経験のある6人が中心となってECMOを使った治療を担った。

 同病院のECMOセンターは今後、医療スタッフを招いて研修するとともに、他病院に出向いて臨床現場での装置の導入支援なども手がける。最大で5人にECMOを装着できる態勢を維持し、将来的には九州全域から重症患者を受け入れることも目指す。センター長に就いた石倉氏は「コロナの第2波は必ずくる。(人的、物的な医療資源の)集約によって、患者の命を救いたい」と説明した。

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