ぐんまアート散歩

五感揺さぶる「匂いの作品化」 

 展示会全体のテーマは両義性。人工と自然、豊かさと貧しさ、差異のあるものにも絶対的正解を導くことはせず、日常の中にある小さな事象の豊かさを拾い上げて表現する。レモンも開催中(1日~7月26日)には朽ちるが、多くはそのままという。ほとばしる生命力も、死へと移ろう。これも両義性だ。

 廣瀬智央作品は現在、東京・六本木で同時開催中の個展「奇妙な循環」(小山登美夫ギャラリー)でも味わえる。こちらは始まりと終わりがつながってしまうようなパラドックスの世界や、とらえどころのない世界観をイメージしていて、前橋とは対照的で、作家の内面を知るには興味深い体験となるだろう。

(アートコーディネーター 笹木理恵)

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