狂犬病注射7割止まり 年々低下、14年ぶり国内発症も

 自治体に届け出ない犬の存在も無視できない。一般社団法人「ペットフード協会」(東京)の推計によると、昨年の犬の飼育頭数は約879万7千頭。市区町村に届け出のあった頭数とは開きがあり、未登録犬の数は相当数に上るとみられる。未登録犬の多くは予防注射を受けていないとみられ、「実態として全体の接種率は4割程度」(専門家)とされる。

 今年は新型コロナも影響した。毎年4~6月の啓発月間に行う集合注射が各地で中止や延期になった。大阪府獣医師会の美濃部五三男(いさお)氏は「今年は接種率が2割程度に落ち込むだろう」との見方を示す。

 近年、首輪や自治体への登録時に渡される鑑札(かんさつ)を犬につけないケースも目立つといい、「鑑札などの装着や予防注射は飼い主のマナーであり義務。災害時に愛犬を守る安全手形にもなる」(美濃部氏)。

世界で死者5万人以上

 岐阜大の源宣之(のぶゆき)名誉教授(獣医学)によると、国内で人が感染した例は昭和31年を最後に確認されていないが、世界では今でも年間約5万人以上が狂犬病で命を落としている。

 世界保健機関(WHO)の推計(2017年)では、死亡者はアジアが約59%を占め、アフリカが約35%と続く。日本や豪州、英国などの一部地域を除き、多くの国が今も脅威と直面しているといえる。

 日本では検疫などで、狂犬病を水際で食い止める仕組みがある。しかし、感染した野生動物が密輸などで国内に侵入し、そこから広がる可能性もゼロではない。源氏は「万一、感染動物が侵入しても飼育犬に予防注射していれば安心。その点でも犬の接種率が年々低下しているのは心配だ」と話した。

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