食品サンプルを製作する「ハンドワークス レナイン」(広島県呉市)が、長時間のマスク着用による耳の痛みを解消するマスクバンドを開発した。マスクのひもを耳ではなく塩化ビニール製のバンドにひっかけ、頭の後ろや首の後ろで支える仕様だ。新型コロナウイルスの感染拡大で食品サンプルの受注が激減して危機感を抱いていたところ、「マスクをつけていると耳が痛い」という声を聞き、食品サンプルの製造技術を応用した。受注生産で、注文から発送まで最大2カ月待ちの状態だが、7月中旬ごろには解消される見込みだという。
飲食店など休業のあおり
「3月までは仕事が入っていましたが、4月になると激減し、4月半ばには受注ゼロとなりました。こんなことは初めてですよ」と、同社の若松信也代表(38)は振り返った。
愛知県で食品サンプル職人として修業を重ね、約4年前に同じ職人だった妻、桃子さん(35)の実家がある呉市で工房を設立して独立した。大手菓子メーカーや個人の飲食店など国内外180社以上もの顧客を抱え、工房での製作体験やイベント出店などを展開していた。
だが、新型コロナ禍で製作体験などのイベントはキャンセル続きでできなくなり、ついには食品サンプルの受注もなくなる非常事態に陥った。
「食品サンプルは広告媒体です。密接な関係があった観光業や飲食業が次々に休業になってしまったので仕方がない」と若松代表。
そんなとき、5歳と3歳の息子が「ずっとマスクをつけていると耳が痛くなる」と言うのを聞いた。インターネットなどを調べてみると、同様の悩みを抱えている人が多くいることがわかった。「食品サンプルの材料と技術を応用すれば、何かできるかもしれない」と思い立ち、桃子さんと二人三脚でマスクバンドの開発に取り掛かった。
カラフルな髪留め風
食品サンプルは、ろうでできているとのイメージがあるかもしれないが、かなり前から塩化ビニール製が主流になっているという。