勇者の物語

桑田、進路の臆測 父乱入「私の口からはっきり…」 虎番疾風録番外編5

報道陣の控室で座り込んだ桑田の父・泰次さん=PL学園
報道陣の控室で座り込んだ桑田の父・泰次さん=PL学園

■勇者の物語(4)

西武・広岡達朗監督「辞任騒動」の注目は次期監督に変わった。一番に名前が挙がったのは前年(昭和59年)に現役を引退していた田淵幸一である。理由は堤義明オーナーがお気に入りだったことだ。だが、チーム作りの責任者・根本管理部長の頭の中に「田淵監督」はなかった。

根本部長は浪人生活5年目の長嶋茂雄に声をかけた。答えはもちろん「NO」。そして古葉竹識にも断られた。それどころか、2人がこぞって田淵を推したのである。

「彼は人気もあるし人望もある。それに野球理論もしっかりしている。西武に一番ふさわしいんじゃないですか」

やはり田淵監督で落ち着くのか…。編集局には、根本部長が田淵監督では心もとないと、参謀役に森昌彦を付けようと画策したが招聘(しょうへい)に失敗した-という情報も入っていた。いったい、西武の監督には誰がなるのか。そんな中でまた別の〝騒動〟が起こったのである。

11月11日、この日はプロ入りを表明している大阪・PL学園の清原和博の家族へ、近鉄や西武など数球団のスカウトたちが、ドラフト前の指名あいさつに来ていた。挨拶(あいさつ)の場所は学園内にある学生寮「研志寮」。多くの報道陣も控室で会談が終わるのを待っていた。

その部屋に突然、桑田真澄の父親・泰次さんが入ってきたのだ。

「いろいろ臆測記事も出ていますし、この際、私の口からはっきりさせた方がいいと思いまして」

この年のドラフト会議(11月20日)の注目選手は本田技研の伊東昭光投手、NTT関東の長冨浩志投手。そしてPL学園の〝KKコンビ〟清原と桑田だった。

清原は早々とプロ入りを表明していた。第1希望は子供のころからの憧れの球団だった巨人。王監督からもサイン色紙を贈られ〝相思相愛〟の関係といわれていた。桑田は「プロでやっていける自信がまだない」と早大への進学を公表していた。だが、マスコミの見方はそうではなかった。

桑田は11月7日に早大への入学願書を提出した。だが一方で(1)退部届がまだ提出されていない(2)なぜ、学校推薦で受験できるのに自薦で受けるのか(3)ドラフト会議から入試まで4日間ある-の理由から、進学表明は他球団からの指名を外させる工作。特定球団の陰謀。〝密約説〟がまことしやかに流れたのだ。もちろん特定球団とは「巨人」のことである。(敬称略)

■勇者の物語(6)

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