電圧フリッカなぜ再発? 九電悩ます広域発生 背景に太陽光発電の急拡大 

 今年3月以降、九州南部の広範囲にわたり、配電線での予期しない電圧変動が原因の「電圧フリッカ」が発生し、電力関係者を悩ませている。広域での発生は平成29年以来で、背景には太陽光発電の急速な拡大があるとみられる。電気の質が悪化する電圧フリッカの影響は家庭の照明のちらつきにとどまらない。工場の生産設備の動作不良にもつながり、ものづくりの基盤を揺るがす。九州電力管内の電力供給を担う九電送配電は、業界団体と連携し、原因究明や対策を急ぐ。(九州総局 中村雅和)

 ■一度は収まる

 3月16日午後、鹿児島、宮崎両県の広域にわたり電圧フリッカが発生した。その日以降も両県内で10回程度続いた。九電にはその都度、家庭や企業から数十件程度の問い合わせがあったという。

 電圧フリッカ自体は、ありふれた現象だ。従来は、特殊鋼を生産する電気炉など大量の電力を短時間で消費する機械の稼働が周辺の配電線の電圧を下げることで生じ、影響範囲も局所的なものだった。発生原因が明らかなことから工場ごとに対策を取ることも容易だった。

 ところが再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が始まり、太陽光発電の普及が進んだ平成24年以降、影響範囲が県単位や複数の県にまたがる広域の電圧フリッカが発生している。九州では平成27年度だけで18回確認された。このときは太陽光発電用のパワーコンディショナー(PCS)が原因と判明した。

 PCSは配電線やパネルのトラブルを検知するために微弱な電力(無効電力)を発信する。それ自体は機器の不良ではなく、保安用に必要なものだ。ただ、太陽光発電の導入拡大に伴いPCSが増加すると、全体では電圧変動への影響が無視できないものとなる。九電は発電事業者やメーカーと連携して、無効電力量を減らすため、29年度末までにPCS約3万台を改修。「広域の電圧フリッカは収まっていった」(九電送配電担当者)という。

 ■九州南部に集中

 一方、その裏側で配電線を取り巻く環境の悪化は進行していた。

 FITのもとで生じた「太陽光バブル」は、買い取り価格の下落などで過熱ぶりは落ち着きを見せつつある。

 それでも、長時間の日照時間が見込め、適地が多い九州南部への太陽光発電施設の進出はここ数年も盛んだ。29年度から令和元年度にかけての3年間で、九電管内の太陽光発電接続量が159万キロワット増加した。うち宮崎、鹿児島両県の2県で約4割(65万キロワット)を占めている。

 3月以降に再発した電圧フリッカも、総発電量に占める太陽光発電の割合が高まる昼間に確認されているため、九電送配電の担当者「太陽光発電由来というところまでは確かだろう」と説明している。

 ■別のメカニズム

 ただ、前回のように具体的な原因は、まだ判明していない。

 九電送配電電力品質グループの江口貴之課長は「以前の電圧フリッカは1秒間に6回の周期だったが、今回は1秒間に3回と状況が異なる。全く同じメカニズムで発生しているとは考えにくい」と語る。

 また、これまでPCSを改修したのは小規模な太陽光発電所で、「メガソーラー」と呼ばれる大規模施設は手付かずのままという。そのような状況が影響した可能性もあるが、「まだはっきりしない」(江口氏)のが現実だ。

 電圧フリッカは今後、太陽光発電が占める割合が高まる秋や来春、大型連休中などに発生しやすいとみられる。

 電気の質に負の影響を与える現象の解消に関係者の奮闘は続く。

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