経済インサイド

ソニーの社名変更 「創業者精神」強調に違和感も 祖業のエレキ存在薄れ

ソニーがことさらにグループ経営の強化にこだわる背景には、「物言う株主」として知られる米大手ファンドのサード・ポイントが、稼ぎ頭である半導体事業や金融事業の切り離しを求めていることがある。

ソニーのような複合企業は、単独事業の価値の合計よりも全体の企業価値が低く評価される「コングロマリット・ディスカウント」に陥りやすく、サード・ポイントは「ゲームや映画などの娯楽事業に専念すべきだ」と主張する。そうした批判をはねのけるためにも、サード・ポイントとは真逆の「事業の多様性で経営の安定性を具現化する」(吉田氏)方針を掲げる必要があった。

その象徴でもある社名変更だが、昭和33年に創業時の「東京通信工業」から、製品のブランド名だった「ソニー」に変更して以来、63年ぶりのことになる。当時はトランジスタラジオなどの商品との関連性が分かりやすい「ソニー電子工業」といった名称も候補に挙がったが、盛田氏が「世界に伸びるためだ」として、「ソニー」という単純明快な社名に決めたという。

その後のソニーは、盛田氏の見立てどおりに幅広い事業に進出した。それだけに今回の社名変更に対しては「何かを限定してしまうようで違和感がある」(OB)との声も聞こえる。数々の世界初の製品を生み出してきた破天荒さが消え、それぞれの事業でこぢんまりとまとまってしまう危険性をはらむというのだ。

そうしたソニーの原点でもあるテレビやスマートフォンなどのエレクトロニクス事業をみれば、売上高は大きい半面、収益性の低さが課題となっている。本社機能から分離されることで、グループ内でさらに存在感を失う可能性もある。

ソニーはこれまでも「VAIO(バイオ)」ブランドで世界展開してきたパソコン事業や世界で初めて実用化に成功したリチウムイオン電池事業を売却するなど、自社の強みを発揮できない事業を切り売りしており、さらなる再編も予想される。吉田氏はエレクトロニクス事業について「今まではリアリティー、リアルタイムを追求してきたが、これからはライブの遠隔化のような新しいチャレンジをしないといけない」と述べ、てこ入れを示唆する。

平成15年4月の「ソニーショック」の業績悪化から迷走が続いたソニーだが、令和2年3月期連結決算の売上高に占める営業利益の割合(売上高営業利益率)は、新型コロナ禍でも10%を超える高収益企業に生まれ変わった。社名変更はこの流れを加速することになるのだろうか。

(経済本部 桑原雄尚)

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