日本の未来を考える

ビデオ会議、今後も定着 学習院大教授・伊藤元重

新型コロナウイルスの感染拡大にZoomでビデオ会議に臨むジョンソン英首相=5月21日、ロンドン(ロイター)
新型コロナウイルスの感染拡大にZoomでビデオ会議に臨むジョンソン英首相=5月21日、ロンドン(ロイター)

新型コロナウイルスの影響で、zoomやteamsなどのビデオ会議を利用する人が増えている。業界最大シェアのzoomのケースでは、昨年末に1日1000万人だったzoomを利用した会議の参加者(延べ人数)が、わずか4カ月で30倍の3億人を超えたと報じられている。この数字の表示法にはいろいろ意見もあるようだが、驚異的な数字だ。マイクロソフトやフェイスブックなどの業界大手もこの分野に積極的に取り組んでいる。ウイルス対策で多くの国でロックダウンが行われ、企業もテレワークを進めざるを得ない現状では、ビデオ会議が増えるのは当然だ。

ただ、多くの人が感じているように、ウイルスの問題がある程度収まったとしても、会議が全て旧来の形に戻るわけではない。ビデオ会議という新しいコミュニケーションの形態が定着していくはずだ。

私自身も、最近、貴重な経験をした。旧知のオーストラリアの学者から、コロナ後の復興と再建へのアジアの戦略について議論したいので、zoomでの会議に参加してほしいというメールが来た。参加者を見ると、オーストラリアや中国や東南アジアの学者に加えて、インドネシアの元財務大臣や世銀やASEAN事務局の幹部も入っている。こうしたメンバーで何度かビデオ会議を行った結果まとめられたのが、「ポストコロナの回復と再建についてのアジアの戦略」というリポートだ。

リポートはeaber.org/covid19で読めるので、ぜひ読んでほしい。コロナの影響でどの国もどうしても内向きになりがちだが、アジア全域で医療や貿易や金融などの分野で協調的な取り組みをしない限り、コロナ後の回復はありえない。そうした戦略についてまとめたリポートだ。

さて、会議の話に戻ろう。このテレビ会議に参加を求められたのは、会議数日前のことである。これまでならこの大きさの会議をするには半年前から準備し、会場を押さえて、そして移動も含めて3日ほどを確保しなくてはならなかった。ビデオ会議なら数日前からの声掛けで、2時間程度の時間を調整すればすむ。1回で内容を詰めるのが難しければ、何回かやればよい。また、それぞれの国からリアルタイムで議論に参加しているので、会議でまとめたリポートの発信もそれぞれの国で迅速に行える。この会議のリポートはすでに中国ではオンラインのChina Dailyで紹介されている。

デジタル情報は距離に制約されないということは以前から言われてきた。しかし、実際にビデオ会議を多くの人が経験することで、会議や意見交換が距離に制約されないということを多くの人が実感しているはずだ。ウイルスの問題があり、国境を越えた人やモノの動きは当分抑制されそうであるが、オンラインでの情報のやり取りはさらに拡大して高度化していくはずだ。コロナ後のグローバル経済の復活は、まずはデジタル技術の活用から進めていくことになるだろう。 (いとう もとしげ)