主張

韓国のWTO提訴 溝を深める不毛な脅しだ

 日本には強く出れば何とかなると、いまだに高をくくっているなら心得違いもはなはだしい。

 韓国政府が、日本政府による対韓輸出管理の厳格化について、世界貿易機関(WTO)への提訴の手続きを再開すると表明したことである。

 日本は昨夏以降、半導体材料など軍事転用可能な物品の対韓輸出を適正に管理するようになった。輸出品が韓国経由で第三国に流出し、拡散することを防ぐためだ。これを早急に撤回するよう韓国は求めている。

 だが、安全保障上の輸出管理はWTOが認める権利である。その厳格な運用は、自由貿易の悪用を阻むため、国際社会の一員として果たすべき責務でもある。

 これを理解しない提訴は対韓不信を募らせるだけだ。むしろ韓国が望む「解決」を遠のかせることに、文在寅政権は気づくべきだ。日本は揺らがず、主権国家としての判断を貫けばいい。

 韓国は昨年9月、日本の措置は不当として提訴したが、その後に手続きを中断し、日本側と政策対話を行っていた。そうした中での一方的な発表だ。

 茂木敏充外相が韓国の康京和外相に「極めて遺憾だ」と伝えたのは当然である。

 韓国は日本が問題視した韓国側の体制不備などは解消したと主張している。そのうえで5月末までに日本側が解決策を示すよう求めたが、運用実態を見極めたいとする日本の立場に満足せず、対話継続は困難と判断したという。

 確かに韓国は最近、体制整備に動いたが、それで万全かどうかは別問題だ。例えば5月に輸出管理の人員を増やしたが、日本と比べると、まだかなり少ない。通常兵器に転用できる物資の規制根拠を明確にした法改正もあり、近く施行される。これも、その効果を評価するには時間を要する。

 そもそも、安全保障上の輸出管理は各国が独自に判断すべきもので、韓国と交渉して決める話ではない。日本の措置は、韓国側の体制不備を大目に見て優遇してきた輸出管理を、通常の姿に戻しただけだ。再び優遇するには信頼に足る運用実績が欠かせない。

 日本の措置を「徴用工」問題の報復と断じ、歴史問題で貿易をゆがめたとする批判もあるが、本質を見誤っている。むしろ、韓国への配慮で拙速に撤回する方が輸出管理の原則に反する。

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