川崎20人殺傷から1年 「みんなずっと忘れない」 爪痕残るも事件と向き合う児童

 川崎市で私立カリタス小学校のスクールバスを待つ児童ら20人が殺傷された事件は、28日で発生から1年を迎えた。カリタス学園ではいまなお事件の影響が大きく残るなか、この日には亡くなった2人の追悼ミサを開き、児童や保護者、教職員らが2人をしのんだ。新型コロナウイルスの影響で、一夜明けた29日は授業も休みだったが、多くの児童はまだ心の傷を抱えたまま。同学園の倭文覚(しとり・さとる)教頭は「学園として、ずっと事件を忘れない」と改めて誓っている。(浅上あゆみ)

 通学時に突然、児童や付き添いの保護者が刃物で襲われ、2人の尊い命が奪われた凄惨(せいさん)な事件は、多くの児童に深い心の傷を負わせた。学園の関係者は「事件の爪痕は消すことができない」と悲痛な声を上げる。

 ■悪夢を見たり…

 事件から1年を前にした27日、倭文教頭が報道陣の取材に応じ、学園の様子を「事件のショックで登校できていない児童がいる」と明かした。事件以降、学園はカウンセラーを増員させるなどして児童の心のケアに努めてきた。

 児童のなかには「悪夢を見たり、背後が気になったりする症状を訴える人もいる」(倭文教頭)。事件発生から今年の3月までで、カウンセリングの相談件数は、延べ約1900件に上ったという。

 一方で、この1年の間に、亡くなった栗林華子(はなこ)さんのクラスの様子には変化がみられた。倭文教頭によると、栗林さんのクラスを担任する教諭が出席をとる際に、事件後も変わらず栗林さんの名前を呼ぶようにしていると、ある頃からクラス全員が声を合わせて返事をするようになったという。

 ■一緒に卒業を

 今春行われた卒業式でも、事件がなければ卒業を迎える予定だった栗林さんの名前を教諭が読み上げると、クラスメートが返事をし、級友が栗林さんの卒業証書を受け取った。「子供たちは華子ちゃんも含めて卒業するんだと言って生活していた。最後の日も一緒に卒業したいという気持ちがあったようだ」と倭文教頭は話す。

 しかし、事件に向き合える児童もいれば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいる児童もおり、同小の内藤貞子校長は「一人一人に、どう寄り添っていけばいいのか苦心した。心が癒やされていない人もいるのに、どのような形で(事件から1年を)迎えたらいいのか」と頭を悩ませた。

 ■追悼ミサを中継

 だが、児童らはA4判の用紙に祈りの言葉を書いたり、写真を貼ったりするなど、それぞれが工夫を凝らしてカードを作り、亡くなった2人をしのんだ。内藤校長は児童が事件と真剣に向き合う姿を見て、「(カードを作ることで)子供たちは自分自身を癒やしているのかもしれない」と児童の心情をおもんぱかった。

 28日、学園は講堂で、亡くなった2人の追悼ミサを開き、集まった約650人分のカードは祭壇に供えられた。ミサには教職員ら約70人が参列し、新型コロナウイルスの影響で児童や保護者は参列できないため、児童らはミサの様子をインターネット中継で見守った。

 倭文教頭は「尊い命を落とされた家族にとって、(亡くなった人を)忘れられることが一番悲しいと思う」としたうえで、これからも「学園として2人のことをみんなでずっと忘れずにいく」と力強く語った。

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