深層リポート

世界で例のない「イネの初冬直播き栽培」 実用化へ光明

【深層リポート】世界で例のない「イネの初冬直播き栽培」 実用化へ光明
【深層リポート】世界で例のない「イネの初冬直播き栽培」 実用化へ光明
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 積雪前の圃場(ほじょう)に種籾(たねもみ)を直播(じかま)きする世界でも例がない「イネの初冬直播き栽培」が実用化に向け大きく前進した。岩手大学農学部植物生命科学科の下野裕之教授(46)が昨年11月に直播きしたチウラム水和剤という農薬(種子消毒剤)をコーティングした種籾で実用化の目安となる春の出芽率40%を達成、この栽培法の成否を握るコーティング材にメドが立ったからだ。

高齢化と担い手不足対策

 下野教授が初冬直播き栽培の研究に着手したのは平成20年。農閑期の初冬に直播きした種籾でコメ栽培が可能になれば、手間とコストがかかる春先の育苗や田植えが省ける。農家の高齢化と担い手不足の有効な対策になるとの発想からだった。

 ただし、実用化には種籾を厳しい寒さから守りつつ、高い出芽率を両立できるコーティング材が不可欠だった。これまでは鉄粉を種籾にコーティングしてきた。しかし、鉄粉を緩やかに酸化させる必要があり、これに1週間かかるという難点があった。

 下野教授は平成30年初冬、鉄粉の分量を変えてコーティングした7種類の種籾のほか、農薬などをコーティングした17種類の種籾も直播き。その一つが、春の直播き栽培の種子消毒剤として使われているチウラム水和剤だった。

出芽率40%を達成

 「鉄粉は一定の成果を上げていましたが、コーティングに時間がかかるのがネックでした。何か他にないかと片っ端から試し、その一つがこの農薬でした。それが出芽率40%。コーティングも種籾にこの農薬を塗布して乾かすだけ。半日もあればできるんです」

 下野教授が驚きを隠さないのはコーティング材の本命は鉄粉と思われていたからだ。同大農学部付属農場(岩手県滝沢市)の昨年度までの実証試験で、コーティングなしの出芽率9%を2倍超の20%に向上させた。それが試しの農薬コーティングはさらに高い40%以上。驚愕(きょうがく)の数字だった。

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