新型コロナウイルスの感染拡大で、地方の百貨店が苦境に陥っている。都市部に比べて高齢化が進み、インバウンド(訪日外国人客)の恩恵も少ない地方都市では近年、百貨店は縮小傾向にあるところに、新型コロナ禍が追い打ちをかけたのだ。
売り上げ6割減
「お客さまを集めたい、という段階ではない。まず安心してお買い物いただけることが大切」。中四国に展開している百貨店の天満屋(岡山市)の広報担当者はこう話す。
同社では緊急事態宣言の全国拡大を受け、各店舗で臨時休業や営業時間の短縮を行っていたが、5月9日以降、店舗ごとに段階的に措置の緩和を始めた。来るべき営業再開に向け、これまで各店舗でレジに飛沫(ひまつ)防止のためのビニールのシートを設け、会計時に客同士で距離をとってもらうための足跡型サインを設置するなど準備を進めていた。そして5月11日に営業を再開した岡山本店の化粧品売り場の一部では、フェイスシールドを着用しての接客を始めた。
だが休業の痛手は大きく、岡山本店の4月の売上高は前年同月比で6割減。営業を再開した5月も同5割減程度を見込んでいる。
こうした中、力を入れるのは通販事業だ。同社では平成25年から化粧品の電話注文サービスなどを始めており、4月のネット販売は当初計画の2・5倍。5月の特販カタログを通じた売り上げは17日現在で前年同月比10%増。25%伸びた店舗もあった。
広報担当者は「規模は大きくはないが、ネット販売や化粧品電話注文は『新しい生活様式』への対応として強化したい」と話す。
ネットで選び、車降りずに受け取り
ほかにも独自の取り組みを進める百貨店がある。
4月22日~5月10日、食料品フロアのみを営業していた岡山高島屋(岡山市)は、この期間中、食料品をドライブスルー形式で買えるサービスを実施した。
ホームページに掲載されている所定の商品を電話注文すると、翌日以降に本館裏側の車寄せで車から降りずに商品を受け取れる仕組み。料理や米、乳製品、野菜など約40品目を扱った。
その結果、客1組あたりの単価は約1万円、注文は1日に10組程度。規模としては大きくはないが、同店の4月の売上高は前年同月に比べ3割減となっており、減少幅を抑える手段となった。広報担当者は「電話を受ける人、渡す人の人繰りが大変だった。今後、行うかは未定」としながらも「検討の可能性はある」としている。