生誕100年 コロナ禍で揺れる現代社会を射る「梅棹忠夫の目」

 梅棹は司馬遼太郎(1923~96年)と何度も対談し親交が深かった。両者をよく知る松原氏は言う。

 「ともにイデオロギーにとらわれず、現場を歩いて考えることを大事にした。既存の枠組みの外でどんな思索ができるのか、二人から学べることは多い」

 〈松原正毅氏 京都大大学院文学研究科修士課程修了。京大人文科学研究所講師、国立民族学博物館教授、坂の上の雲ミュージアム(松山市)館長を歴任。専門は遊牧社会の研究〉

感染症の破壊力

 「文明の生態史観」で梅棹は、第二地域の遊牧民について「はげしい破壊力」を強調しつつも、その原因について「的確なことをいうことはできない」と留保している。感染症に詳しい長崎大熱帯医学研究所の山本太郎教授は「実はペストが関係していたのかもしれない」との見方を示す。

 ユーラシアの半乾燥地帯の風土病であったペストは何度も、中国や欧州に感染拡大して打撃を与えた。欧州では14世紀の感染で、人口の3分の1が死亡したとされる。免疫を持たない人々に与える感染症の破壊力は、欧州人が新大陸に進出する際にも示された。

 山本氏は「この『はげしさ』が遊牧民の軍事力だけではなく、感染症によるものだとは考えられないでしょうか」と話した。

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